成長伏→雑A

「諸…泉さん…はぁっ…もう…忍としては、使え…ない、でしょう…?」
 
それくらい酷くした覚えがある。不意討ちして、薬を嗅がせて、両手両足を滅茶苦茶に折って、潰して叩いて殴って剥いで切って絞めて抉って…目はどうしたっけ?潰したんだっけ?
 
「目的は何だ」
 
さっきより降り注ぐ言葉に力が入る。でももう僕には全てを語る力は残っていない。指先から段々冷たくなってきたんだ。血が流れてるんだろうなぁ。人生の最後をあなたといられるなんて、幸せだ。さぁ、これが作戦の、最後の火付け。
 
「あなたに…本気のあなたに…会ってみたかった…から…」
 
 
彼の目が見開かれる。驚愕と憤怒に彩られたそれは、冥土の土産にするには充分すぎる代物だった。これで僕を殺すのに、躊躇いは無くなったでしょう?
 
「たった…それだけのために?」
 
彼の喉が震える。嗚呼、あなたもちゃんと、血の通った人間なんですね。一丁前に、傷ついちゃったりしてるんですね。僕じゃない人を想って、僕じゃない人の為に。
 
「…あんな人、死んだって…構わないでしょう?」
 
喉元にあった刀が風を切って振り翳された。僕は微笑みながら目を閉じる。この苦しい日常がやっと終わることに安堵しながら。
 
本当は、殺しちゃってもよかったんですよ、諸泉さん。あなたに愛されてる男なんて、どれだけ憎いと思ってるんですか。でもそうしたら、あなたきっと廃人みたいになってしまうでしょう。仇討ちする気にもなれないくらい、駄目になるでしょう。それじゃいけないんですよ。あなたの本当に悲しむことをしたくないっていうのもそうですけどね、諸泉さんが生きていれば、その傷ついた身体を見るたびに、僕を思い出すかもしれないじゃないですか。もうあなたに想ってもらうのなんて、そんな方法しかないんですよ。愛してなんて言いません。その代わり、憎しみでもいいから、僕を想って下さい。あなたの心に、住まわせて下さい。そのためなら僕は死すら厭わない。僕のものにならないあなたを想う日常は、死より酷かった。
 
 
 
「さようなら…」
 
僕に愛されたのが、運の尽きでした。お幸せに。

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