行かないで4




何だ。
何なんだ。



三週間も会ってない。



三週間、もだ!



会いたくておかしくなりそうだ。


あのときからだ。

腕掴まれて、いきなり泣き出した時だ。今更だが、あれはやっぱり俺と居るのが嫌で別れを切り出そうとしていたんじゃないかと思う。



別れるのだけは勘弁して欲しい。あの時、あいつの口から「別れよう」と述べる筈だったのかと考えるだけで、心が折れてしまいそうだ。



次に会ったら多分、最後になるだろう。

あいつに俺は必要無いのだ。



「………、」



くそっ!

どんっ!

「いたっ!」



肩に誰かぶつかって、食満はハッと我に帰った。

伊作が肩を押さえていた。


「ああ、いたのか」



朝からずっと潮江の事を考えていた為、意識が完全に飛んでいた。伊作は、ひどい、とか、さっきから呼んでたのに、とかぶつぶつと文句を言っている。



(そうだ)



(仙蔵。仙蔵に話を聞いてもらおう)



俺の頭の中で、あの言葉が甦った。



『―あんまり積極的になると、逃げられるぞ…』




゜.・。:+.゜.・。..゜.・。.+゜・。:+




昼休み、学習室の隅で昼食をとっていた私の向かいの席に、何も断らずどすりと食満が座り込んだ。




「仙蔵、聞いてくれよ!」



「なんだ」




図々しいやつだ、私の昼食を邪魔するなんて

私は片眉を上げる。



「前に、お前、俺が文次に対してあんまり積極的になりすぎると逃げられるぞって言ったろ?」



「言ったな」



文次はうとい。あまり色事に首を突っ込むまいとするところがあって、それは自分自身を守っているようにも見えたからだ。

というか第一、貴様が私の文次に手を出すなど不躾なのだ、という宣告でもあった。
本人は気付いてもいないみたいだが。





「逃げられかけてるんだけど、どうしたらいいと思う。」





「はぁ?」




思わずふっと笑いが零れた。真剣な顔で言うのだ。可笑しい。

私に笑われたのが気にくわなかったのか、食満がむっとして事情を話始めた。


「俺、すげー我慢してんだよ。あんま文次ビビらせないように。でもさ、付き合ってもう何ヵ月たってるし、手とか繋いだり、抱き締めたりキスしたりして良いじゃんって思うだろ!?」


「お前の都合だろ」



「ちげーよ!これじゃあ俺達、セックス出来んの何年先だよ!とか思ってよ、」


「…それこそお前の都合だろ…」



食満は不満げな顔で、「そうか?」と言った。



「いやしかしな、俺本当に耐えてたんだよ。最後に会ったのが…ええと、二…いや三週間前なんだが、急に文次が泣き出して、どっか行けって言ったんだよ。」



私は箸を止めた。

泣き出した?

あの気高い文次がそう簡単に人に泣き顔を見せるだろうか。



「やっぱ…別れようとか言うつもりだったんだよなぁ」



机に置いていた手の甲に顎をのせ、子供のように食満はしなだれた。
私の弁当のミートボールを情けない顔で見つめる。



「ふん…」



私は少し考える素振りを見せる。



(泣き出した、)



どうも道理が通らない。

別れたくて泣くだろうか?


(別れたくない、ならまだしも)



「…!」

「?、何だ?」



私がはっとすると、食満が慌てて頭を起こす。



もし、文次郎の方もコイツと同じように誰かに相談を受けていたとしたら?



(ここ最近、保健室に出入りしている文次郎を見た。)



伊作でも私でも、きっと言うことは同じだ



だってお互いに足りないのは、結局はお互いの存在なのだから。




「食満、私に任せろ」


「え」


「…原因は、私達にあるらしい」


仙蔵はにやっと笑い、席を立った。翻るセーラー服とストレートのポニーテールが、よく似合っていた。







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仲良くしてあげて。
私と、
彼女が悲しむから
6/19.8:06 電車内

英単語ぉぉぉぉ

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