いじわる2
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いじわる
「……、が、先に言ったんだからお前が先に言え!」
びっくりした!
「な、なんだよ!ったく。」
もう、いい。
「俺の好きな奴?はなぁ!」
もういい。
もうこいつにドキドキしたり、嬉しくなったり悲しくなったり怒ったりするの、もうやめた。
だってこいつの好きな奴は、俺じゃないから。
俺じゃ、なかった
そりゃそうだ
喧嘩ばっかしてて
女らしくなくて
ぶ、ぶさいくだし
自分の事俺っていうし
俺は息を吸って言いたい放題言ってやることにした。
だれか、だれか止めてくれ。小さな恋に自暴自棄になる小さな俺を
「…そいつはっ!目付き悪くって!無駄に勝負好きで見た目ヤンキーで、後輩から嫌われてて変な髪型で手が猿みたいに長くて何言っても喧嘩口調で一ヶ月前まで携帯の待受が猫だったヘボい奴!」
あ、あと、
メールやたら絵文字つけるのうざいってのもあったな…ちくしょー俺より可愛いメール送りやがって
溢れる感情を喉元で押さえ込んでいたのに、食満の「そんな奴いたっけ」という惚けたことばで何かが切れたように吹き出した。
俺は、怒ろうと思った。
だって、そんなの。
何でわかんねーんだよ
「お前だろぉっ」
拳を振り上げようとしたけど、そのまま手は自分の顔を覆っていた。
俺は顔を真っ赤にして泣いていたのだ。
ぼろぼろぼろぼろ泣けて止まらない。
食満がこっちを見てる気がしたけど、俺は部屋の隅っこに一人でいるみたいな気持ちだった。
俺はこんなに好きだったのか?
こんな奴が!
泣くな、俺。
こんな奴のために!
強く目を擦ろうとすると、俺じゃない何かが手を掴んでそれを阻止した。
「あ…」
次に目に飛び込んだのは、食満の怪訝そうな表情だった。
食満は俺の手を握り絞めたまま言った。
「お前、まだ俺の好きな奴聞いてねぇだろ。」
「はっ!?、」
何を言うんだこいつは。
そんなの聞いてみろ!
泣きっ面に蜂だろー!
蜂かお前は
泣いてんだか睨んでんだかわからない俺の顔は、さぞかし滑稽だったのだろう。
ふふ、と食満は笑ってから、俺の手に指を絡め直した。
「わかんねぇな」
「はぁ???」
自分で言っといて何でわかんねんだよ!
「お前、何で泣くんだよ。」
「っ…てめえどこまで鈍感なん」
「あーあーそーじゃなくって」
「俺もお前が好きなのに、ってこと」
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どっちが鈍感なんだかわかんねーな
えっ?…何で?お前、えっと、先に言わねえんだよっ!?
お前に、
いじわるしてやろうと思ってさ。
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[mokuji]
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