ジャングラー

宿題を一緒に片付けようと食満の部屋を訪ねる。

ゆっくりと四つん這いになりながら文次郎は食満に近づいた。
食満は座布団を枕に横になったまま静かに目を閉ざしている。
寝てるときの食満の顔は、子供みたいに綺麗で純粋で、触れてはならない神聖な崩れやすいモノの様だった。
それでも文次郎は近づいて、それからある位置で止まった。

食満の顔がよく見える位置に。

それから、じっと見つめて溜め息をついた、また肩で息を吸い込んでから、

床に手をつき、

食満に顔を近づけた。

ゆっくり

自分の行動にたじろぎながら

俺はこいつが好きだ、って気持ちと向き合いながら




壊れやすい未来を感じながら




目を潤ませて




息がかかるほど、顔を近づけた。




唇に触れる間際に迫る





その時、

「あっ、そうだ。俺、課題」



途端、食満がそう言って目を開け起き上がった。

文次郎は驚き飛び上がって後ろに尻餅をついた。

そこは机で、文次郎の体重に負け机は派手にひっくり返ってしまう。

幸い体には当たらなかったものの、飲みかけのお茶や教科書等々、机の上にあったもの達は霰もなく飛び散ってしまったのだ。

「わぁっ、お前、何やってんだよ!あーあーあー。」

とんでもない失態を犯し、文次郎は決まり悪そうに顔をしかめた。とりあえず側にあった手拭いで零れた茶を拭いながら、「お前、起きてたのか」と悪態をついた。

(あとちょっとだったのに!)

食満は大事な参考書や教科書が水害に合わないよう部屋の隅におっぽり投げながら、「起きてたら、何だよ。」と苛ついた声で答えた。課題の一部が茶で滲んでいたのだ。文次郎が返事に戸惑っていると

「なんだよ、って聞いてんだ」

事態を確かめるように食満は強調する。
それでも文次郎は口を開けないでいる。
そうして、何とか弁解の余地を探ろうとする。

(別に、悪いことはしてない。)

(ただ机をひっくりかえしただけで、畳みに染みを作ったけれど)

(それは事故だ)

(不意に起こった事だ)

(俺は何も…やっ…て、)

(ない。)


しかし、眠った顔では想像出来ない、食満の鋭い目付きにたじろぐ。黙っていられず、「別に、」…とぼやいて顔を背けた。



食満からの視線が痛い。






(何をやってるんだ、俺は)

今更後悔し唇を噛みしめる。


すると、不意に視界が暗くなった。
何事かと体を強張らせると、噛みしめ張った唇に、柔らかい別のモノが、触れた気がした


間を置いて視界が開け、食満の顔があった。


「…?」


殴られどつかれる、と思っていた。

わけが解らず、きょとんと床に座り込んだままの文次郎に、食満があどけなく笑った。


「こうしたかったんだろ?」



食満が今までの剣呑さを晴らす爽やかな笑顔を見せたので、文次郎は暫く思考が回らず、とにかく食満の顔をじっと見ていた。

そしてその目が空をさ迷い、

床に落ち、自分の手を唇に当てた。

先程の感触が蘇る。

みるみる顔が朱に染まる。
同時に表情も、泣きそうな霰もない顔へと変わっていった。

「…、…っ、………。」

何か言いたげだが、言葉が出ないらしい。

食満は少し待った。
すると、とんでもない返事に、困惑し困った顔で笑うのだった。





「俺が、先に、しようとしたのに!」






゜.・。:+.゜.・。..゜.・。.+゜
10/17
9:12

キスをする間際、目が潤む文次郎。

その目に映るのは、

恋とか、夢とか、悲しみとか、

そんなんばっかり、

胸が弾けて、

又、恋をする。


「ジャングラー」
不意突き。

悪びれもなく笑うお前、


ばか、たれ。


゜.・。:+.゜.・。..゜.・。.+゜
書いてて恥ずかしくなってきた\(^o^;)/

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