勉強する


「うう、精液ほしい…」
現在進行形、淫魔見習いであるユキジは二回連続で精液を貰いそこねたことで悲しみに満ちていた。逃さないようにと動いたつもりなのに、最後の最後で詰めが甘い。
こんなことでは一向に淫魔にはなれない。淫魔になるには身体の器に見合った精液を吸収し続けなければいけない。そうでなければいつまでも半人前のままだった。
どんよりとしたユキジの先は暗い。とぼとぼと歩くユキジはふと、知った気配に顔をパッと上げた。
「兄貴…?」
遠くから、背の高い見知った顔が歩いてくる。ユキジはたまらず走り出して飛びつく。
「おや、ユキジ」
「兄貴だー!会いたかった!」
ユキジとは違い、白い肌に甘栗色の髪の毛と彫の深い顔立ちは外国人のよう。ユキジの兄貴分であるシラオだ。
「兄貴、おれ話したいことがある!」
ユキジはいつも餌を取り損ねることを愚痴ろうと考えた。何より久しぶりに会う兄に甘えたいのだ。優しい顔をしてシラオは頷く。
「私もあるのです」

何処にいこう、となると二人の足はよく使うラブホに向いた。
ユキジとは、違い正式に淫魔であるシラオも餌を食べるのにほとんどラブホで行われる。男二人だが、異色な二人は受付に見つめられながら部屋に入った。
「どうしようこのままじゃ淫魔になれないよぅ」
「私も見ました。二回連続で逃してるのには頭を抱えましたよ」
実はシラオ、ユキジのセックスを二回とも眺めていた。
「だ、だって」
小生意気なユキジも兄のシラオには甘える癖がある。いつでも優しい兄がユキジは大好きだ。
うるうると涙を浮かべているユキジにシラオは溜息をついた。
「では、私と一緒にお勉強しましょう」
シラオの言葉にユキジは一瞬で顔を青ざめさせた。シラオの言う勉強がユキジはとても嫌いだったからだ。優しい兄が意地悪になる。
いい、いい、と頭をふるユキジのシャツを脱がすと万歳と言いながらあっさり脱がして露わになる褐色の肌に手のひらを乗せる。
「あっ兄貴ぃ…」
「次も逃したら困るでしょう」
一人前の淫魔である言葉には圧力がある。滑らかな身体の曲線をさわさわと撫でて、シラオはにっこり笑う。優しそうなこの顔に兄が好きなユキジは小さく呟く。
「わ、わかったよぅ」
血の通ってなさそうな冷たい指先が胸元を滑る。乳輪にそっと触れられじわじわと熱がこもる。
「あっ…ぁ、ん」
指の腹で柔らかく刺激され、下半身にずくずく来るのを感じながらもユキジはシラオを見上げる。目が合ったシラオは感心したように目を瞬かせた。
シラオをうまく誘えばいいのだ。そうすればこの勉強も終わり、気持ちよくなって終わりだ。
「あっ、あんっ…さわ、って」
「どこを?」
「ち、…ちくび、…んっんぅッ」
ツンツンと触れると熱が背筋を通り抜ける。くすぐったさと小さな快感を拾いながら、指に胸をくいっと押し付ける。
「あっ…ああっつま、んでるぅッ」
小さな粒を押しつぶして摘まみ上げられ、背中をそらして喘ぐ。くにくにと摘んで左右に揺らされ、そんな動きをされれば嫌でも感じる。
「気持ちいいですか?」
囁かれ、素直に頷く。しかしくつりと笑う不敵な笑みには身体を捩って逃げる。
「あ、んぅっ…ああっつめ、だめっ」
硬質な爪で何度も弾かれ、痛いくらい感じる。弄くり回され兄に翻弄され、それでも感じる。それでも精液を求める、それが淫魔だ。
かり、と引っ掻かれ思い切り背中が海老のように仰け反る。
「んああっ」
その時にユキジは自分のペニスが目に入り、耳を赤くする。正直な反応を示して、つゆをたらりと零していた。そんな様子に興奮して、息を吐く。
「あにき、もっと…あうっ」
「欲しがりな子ですね…困ります」
(こわい顔してる)
シラオの目はぎらりとしていて、普段の穏やかな色が消え失せている。
そんな思考も揃えた指で乳首を擦られ、凸凹な部分に突っかかっては弾かれればどこかに飛んでいく。頭に電撃が走ったようだった。
「ああッだめぇ、っは、あッ」
「欲しいんでしょう?」
「ん、ぅんッ…ちょうだい、」
欲望に忠実に望みを吐き出すと、シラオの指は胸から退きぬるつくペニスに触れる。ゆっくり上下に扱かれ腰の奥がずくずくする。
「ううっ」
「ほら、もっと欲しがるんでしょう」
「お、…おれの、おまんこに、」
「だめです」
へ?ユキジの間抜けな声が響く。その間もペニスをくちゅくちゅ弄る音は止まず、小さく身をよじりながらもシラオを見上げる。
「もっと恥じらいながら」
シラオの目は真剣で、ユキジは泣きたくなる。
「おれの、けつ、あな…?」
「品がありません」
どこかこだわりがあるシラオはユキジに対してスパルタで容赦がない。こういう時だけ、いつもそうなのだ。優しい言葉も甘やかしてくれることもない。
相手に品がなくて萎えさせたことはある。相手によっては自分の言葉使いも変えなければいけない。シラオもそうだ。
しかしユキジはまだまだだ。小生意気な性格を抑えられない。
「…あ、…おく、に、たくさん、あにき…うう、お、おにーさんの、くださ、いッ」
「…可愛いです」
アナルの縁をちろちろなぞり、悶えるユキジを見つめながら長い指を滑り込ませる。ぴくぴくと震えて、褐色の肌を汗で火照らせて感じる姿は淫らだった。
「うう、あんっ…んあっあっ、あ、ひうっ」
指がバラバラに中で揺らめき、いたずらに肉壁に触れるとユキジはたまらず目を瞑って快感を逃がそうとした。
「ああっ…ぁ、んんッなか、が…あ、あっ!」
「ユキジ」
名前を呼ばれ、見上げると鼻がつきそうなほどの距離にシラオの顔があった。その目が語っているのだ。もっと強請れと、男を離すなと。
そういうのは苦手だが、一人前になるには兄の言う事を聞くのが正しいはずだった。
「お、願いっ…なか、に、たくさんッ…どぴゅどぴゅ、出してぇッ…あああああ"ーーーッ!」
じゅぶぶぶっ
中にぴったり収まるように入ってきた肉に、ユキジの口からは悲鳴のような喘ぎが迸る。シラオのはとても大きいのだ。シラオより大きいのを見たことがない。
「あうっ、あに、き、…あひぃっ…お、きいッ」
「我慢してください…それに、ほら」
「ナカ…たくさん、突いてッ!」
じゅぶっじゅぼっじゅぼっじゅぶっ
激しい律動に視界がぶれる。
「ああんっあんっあっ、イっちゃうッ」
「おや」
「ああーーーッごりごり、っ、らめぇッ!」
「早いですね」
飄々とした冷たい顔。なのに怖い目。優しさはない。だが驚くほど身体は敏感になり兄から与えられる何もかもを受け取った。
「ああッッ」
どぷ、と溢れた精液が腹の上を川のように流れて湖のように溜まる。身体がひくひく揺れると水面が揺れているように見えた。
しかし、律動は止まらない。身体の奥から津波が襲いかかってくるように衝撃は止まらず、ユキジは縋るように、突き放すようにシラオを押した。
「や、あっ…ま、ってぇっ…ひ、あ、あ"ッ!」
イったのに、まだ敏感なのに、シラオの勢いは止まらない。むしろ増したようだった。
「まだ私はイってません。精液が、欲しいんでしょう?」
「ふうう…っ、ぅ、んっ」
「抜いてしまってもいいんですよ」
「っ、嫌だっ…ひうっ」
イったばかりのまだ震える肉筒をどうにか力を入れて締め付けると、足も離さないように腰に巻きつける。シラオは良く出来ましたと言わんばかりに微笑んでいる。
「そうやって離さないで、もしナカに出されたとしてももう一回ちょうだいと急かすのです」
「お、俺も、イったし…むりっ」
「でもたくさんもらえるんですよ」
確かに精液は、欲しい。一度で二度美味しい、そんな魅力的なことにユキジは瞳を揺らした。そして自身の腰を揺り動かす。
「ああ、…いい、ですよ」
「も、っと…ナカ、っあんっんっ」
ぎゅうと締め付けて、足を絡めた腰を引き寄せるとさっきより奥まで潜り込んできて、敏感なナカを擦られる。電流のように走る快感にユキジはたまらなくなり、自分の乳首に触れていた。
「ひ、あっ、ああッッ」
「やはり、ユキジはとても敏感です」
違うのだ。ユキジが敏感ではなく、シラオがユキジを知り尽くしていて感じる場所を的確に絶妙な力加減を加えているのだ。普通の男ならこんなには感じない。何故なら彼らは餌で、シラオは餌ではないから。
ちょんちょんとイタズラのように触る物足りなさに、すぐ強くつまみあげていた。
「っ、あ"あっぢ、くびっ…ひっ」
「もう、イきます…ほら、ここもっと締めて」
「ッッーー!ああっ押っ、さないでぇ…ッ」
快感の波が、大きくなって襲ってくる。
シラオに腹部を軽く押され、中にあるものを余計意識してシコリがごりごり潰される。めちゃくちゃに引っ掻き回されるようで、ユキジは咽び鳴く。
「あんっも、う…イってぇっあに、きぃッ…お"ねがいっ…ひいいーーーッ」
だらだらと蛇口が緩んだように溢れ続けた我慢汁に塗れたペニスを掴まれ、目の前が一気に白くなる。
「だめっ…あ"あぁッー!はあっんんんんんっ!」
ぎゅうとシラオのものを締め付けてユキジは精液を垂れ流した。どぷっと飛び出て噴水のように周りに飛び散らせて、褐色の肌を紅潮させた。太ももががくがく震えて、止まらないほどだった。
同時に中に広がる温かな感触を味わう。そしてユキジは悲しくなった。こんなに頑張ったのに、精液は美味しくない。
当たり前だった。シラオは淫魔で餌ではないからだ。
「ううっ…おいしくない、よぅ」
「…当たり前ですよ」
ただシラオの精液も全く意味がないわけではない。が、ほとんど吸収されないのだ。大好きな兄のは美味しくない。
「にがいっ…兄貴のばかっ」
ナカからペニスは抜かれ、アナルがぱくぱくするのを感じながら頬を撫でる大きな手に擦り寄る。汗ばんだ肌には冷たく、気持ちが良い。
「ユキジ…すみません」
優しく謝るシラオを見つめて、ユキジはようやくホッとした。いつもの優しい兄だったからだ。



前へ戻る◎次へ
ホーム


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -