結局無駄な努力
ロアに注意されて、「はい、そうですか」と引き下がる二人ではない。
二人はみんなが寝静まる夜中、地下のガラフの部屋のドアの前で待ち合わせた。
お互い、極力声を出さずに目やジェスチャーで会話する。
懐中電灯を持つピュセルがドアを開ける。
階段を降りきれば、まずはガラフの研究室がある。寝室はその奥だ。
変な緊張を持ち、二人は寝室のドアを開け、そこから中を覗き見た。
音が全くしない寝室。
そろりそろりと、二人は寝室に入り、ガラフの眠るベッドへ近づいた。
ベッドでは仰向けで、右手の指の間に左手の指を合わせた手を胸の上に置いて規則正しい寝息を立てるガラフが寝ていた。
顔にはもちろん仮面が…
「死体みたいじゃん」
「仮面したまま寝てるのは想定内だね」
二人は小声で会話した。
そして
ガラフの仮面に手をかけるピュセル
「!?」
えいっと仮面を外したピュセル。
ガラフの素顔と思われるものを見た二人は声にならない悲鳴をあげ、血相をかえ、転がるように地上へ向かって駆け出した。
「きゃあああぁぁぁぁ!!」
階段を上がりながらようやく出た悲鳴。
ドアを吹き飛ばす勢いで開け、廊下へ出ると、二人は腰が抜けてしまった。
「なにやってんだ、ガキども」
冷たい目線をくれるのは、寝起き最悪なジズ。
「あ、あ、ガラフ…顔……」
やっとの思いで紡ぎ出されたことば。
「モザイク処理しないと見れないほどやばいでしょ」
ネフィルティスが一緒になって青い顔して言う。
「いい加減よせばいいのに」
テツが呆れながらクロロの背中を撫でてくれた。
「いい加減にと、我は言ったはずにござりましょう」
絶対零度の声がする。
「限界という言葉を理解しない愚か者共…次の恐怖は我が与えてやろう」
「いやぁぁぁ!!」
ロアは、ピュセルとクロロの首根っこを捕まえ、そのまま自室へむかった。
一晩中説教されるのだろう。
同時刻、地下室。
ネフィルティスに『モザイク処理しないとやばい』と言われた顔を、べろりと剥がしたガラフは、サイドテーブルに置かれたスタンドを付けた。
ピュセルが放り投げた仮面をサイドテーブルに置く。
地上からピュセルとクロロの悲鳴が聞こえた。
楽しそうに笑うスカイブルーの瞳が電気に照らされた。
もう、maskを取ろうなどと考えないだろう。
ガラフはスタンドを消してベッドに入った。
そしてスタンドに背を向けて眠り出す。
……久々に楽しかったですよ……
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