俺は浜田庵は女なんじゃないかと思っている。先輩、そう呼ぶ落ち着いたら声も俺よりも高い背丈も、細い骨ばった手も男のものだ。 でもしなやかな物腰やお菓子を作る指先やバニラエッセンスの香り、ふんわりとした笑顔はどう考えても女そのものだ。

「女って、多分。こんな感じ」大の男を見つめながら思うことじゃないかもしれないがそれほどこの後輩は《女》らしかった。確実に俺の目の前で大口をあけてあくびをしながらあぐらをかく妹よりもはるかに女だ。


「楓、何みてんの気持ち悪い!泉ちゃんが弁護士なったらセクハラで訴えんぞ」
「あ?やんのかてめえ」


10分くらいの椛との言い争いと取っ組み合いを経て自分の部屋に戻る。布団の上にごろんと横になるとまた庵の事が頭に浮かんだ。

「せんぱい」と笑う庵の顔が頭から離れないんだからどうしようもない。ぼんやり空を見上げている口元も、俺と圭と椛のやり取りを見て笑う声も、穏やかな瞳も。今俺の脳みそのすべてが浜田庵で構成されてると言っても過言じゃないと思うくらいにだ。

「相手は男だぞ」とか「大事な後輩だろ」とか足りない頭でぐるぐる思考を巡らせたが一向に答えがでないので考えるのはやめた。でも、確信していることがひとつだけある。


俺は、浜田庵に恋をしている。


それは、確かに揺るがない事実なのだ。庵が好きだ、いおりが。好きだ。いつからかはわかんねえけど、自分が浜田庵をそういう目で見ていることは薄々わかっていた。だから「うちに来れば」なんて言ったのかもしれない。庵は素直に喜んでる一方で俺は無意識にこんなことを考えている。自分が自分でないような不安感。好きだと言えたらすっきりする反面庵をまた一人にすることになる。そう思うと動けなかった。


20131105



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