※自傷行為あり




なんとなく。なんとなく庵くんの首筋にカッターを当ててみた。にっこり笑いながら「一緒に死んで」って言ってみたら「一人で死んでください」と思い切りみぞおちを蹴られた。そのまま俺はソファーから落下し「ぐぁ」と情けない声をあげた。どんがらがっしゃーん!落ちたときに打った頭がぐるぐるとする。さっきまで握っていたカッターは刃が飛び出たまま(下手すりゃ刺さってたよ、庵くん)無様に床に転がっていた。

不満は多々だが「いたいよ」と短く言うと庵くんは「死ぬのはもっと痛いんですよ」と雑誌に目を向けたまま気だるそうに言った。すー、はー。たくさんある空気をすって息を吐くだけ。そんな単純作業にめっきり疲れたのである。



カチチ、カッターを幾度か出し入れしぼうっと刃先を見つめる。今度は自分の首筋にカッターを当ててみた。

「じゃあ庵くんに一生消えないトラウマ作っちゃおうかな」
「は?」


前々から思っていたけど庵くんは俺の扱いが非常に乱雑な気がする。庵くんの眉間のしわとシンクロするようにカッターの刃がちょっとずつちょっとずつとめり込んでいく。そしてここでシュッとスライドしたら俺の《庵くんに一生消えないトラウマ作っちゃおうかな作戦》は大成功だ。しかし優しい優しい庵くんはめんどくさそうに「死んだら一生俺とセックスできませんよ」と言った。それはとても耐え難いので生きることにした。人生とは常に単純なものなのだ。



20131106



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -