俺さあ、荻が好きなんだよね。
緒方と久しぶりに飲みにいこうと話が進んで、偶然見つけた人っ気のないバーに入った。今日の緒方はやけに酒のペースが早くて俺が1杯飲み終わるときにはもう4杯目を頼んでいた。俺はブルーのカクテルを口に含みながら笑った。
「おい、いくらなんでもピッチ早すぎだろ」
「んー?なんだぁ洋、心配してくれてんのかぁ〜よしよし」
相変わらずうざったく絡まる緒方の腕を素早く払うと緒方は新しいコップに口をつけた。それはそれは綺麗なオレンジ色だったのを覚えている。ごく、ごくり。喉の鳴る音が聞こえて、みるみるうちにそのオレンジは緒方のなかに吸い込まれて行った。そして緒方は自嘲気味に笑った。
「ところで洋、俺の告白に突っ込みはないのか?」
「突っ込んでほしいのかよ」
「んー、散々貶して欲しかった、かな」
「…本気かよ」
俺は震える手を押さえつけながら言う俺に緒方は笑って頷いたた。そのまま緒方はコップに頬を擦り付けながら犬みたいに「うー」と唸っている。
こんな反応をされては俺はどうすることもできない。こいつは俺の相棒に恋をしているのだ。
「緒方」
「ん」
口元をにやにやとさせながら緒方がこちらに向く。酔いがまわって虚ろな瞳にはいまにも零れそうな涙がたくさんつまっていた。それが光にきらきらと反射して、とてもきれいだ。俺は緒方の長い髪に指を絡めた。
「おれ、お前が好きなんだけど。どうしてくれんだよ」
いまさら遅かったね その時の緒方の「ありがとう。ごめん、」とついにあふれた涙は、俺のなかでずっとぐるぐるぐるぐる乱反射している。
20130401