高校生佐田雨






隣の席の女の子が学校を辞めた。
わりと、可愛い女の子だった。人懐っこくて毎朝友達に挟まれながら隣の席の俺に「おはよう」と声をかけてきた。別に好きとかじゃないが、気持ちの良いクラスメイトだった。うるさくもなくかといってノリが悪いわけでもない。至って普通の女の子だった。彼女が学校を辞めた理由は妊娠だった。相手は同じ学校の1つ上の男らしい。

ばかだよなぁ。佐田くんは俺の話を聞いて溜め息をついた。男も女もどっちもバカだ。佐田くんはそう言うと焼きそばパンを口一杯に頬張った。その1つ上の男は、佐田くんと同じクラスだったそうだ。


「佐田くんはその人と知り合いなの?」
「いや…そんな仲良いわけじゃないけど」


でも、普通に良いやつだったよ。そう言って佐田くんはまた溜め息をついた。よほど信じられないというか、現実味がないのだろう。自分と同い年のクラスメイトが母親と父親になってしまったのだから。


「ねえ佐田くん」
「なんだ?」
「もし恋人に子供ができたら、どうする?」



「子供って、絶対できないだろ」


だって俺の恋人、太陽だし。それともなんだ、太陽子供産めるのか?そういう佐田くんは相変わらずのまんまるな瞳と顔で、俺はふふ、吹き出した。


「うん、まあそうなんだけどさ」

そう笑う俺に佐田くんは唇を尖らせてすこし考えたように上を見上げると、思い付いたようにこちらに視線を戻す。そして、真剣な面持ちでこう言った。



「まあ、万が一できたとしたら幸せにするさ、お前も、子供も」

「え」



かああああ、佐田くんがやたらと男前なことを言うものだから、俺の顔がどんどん熱を帯びていくのがわかった。あつい。そして、今更ではあるが不覚にも男である自分を憎たらしく思うのであった。




20121010



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