狩屋くんは素直じゃありません。


狩屋くんは素直じゃありません。嬉しいと顔を背け悲しいと笑いしあわせだと泣きます。現に狩屋くんは今、わんわん声をあげて泣いています。狩屋くんはしあわせなのです。しあわせでしあわせで、こわいのです。

狩屋くんは今日、霧野先輩に告白されました。「おれ、狩屋が好きだ」と霧野先輩らしく簡潔な告白だったそうです。素直じゃない狩屋くんは顔を背けましたが霧野先輩は狩屋くんに「俺のこと嫌いか?」と聞きました。ここだけの話し、狩屋くんは霧野先輩が大好きで大好きで仕方ないのです。狩屋くんは「別に、嫌いじゃないです」と言いました。すると頭の良い霧野先輩は僕の翻訳なしに狩屋くんのアイラブユーを読み取りました。狩屋くんは霧野先輩とお付き合いすることになったのです。

狩屋くんは「どうしよう、輝くん」と僕に言いました。その目を真っ赤にしながら言いました。(おれ、すごくうれしいんだ)狩屋くんはそういってまた泣きました。


彼の震える頭を撫でると、狩屋くんはぐちゃぐちゃの顔のままにぱっと笑いました。狩屋くんは嬉しいのです。狩屋くんは、なぜか僕には素直でした。それはきっと僕という友達に安心しているからなのです。僕たちは友達だからです。

「狩屋くん」
「ん」
「よかったね」
「ん」


臆病者の僕は、嘘をつくしかありませんでした。精一杯の笑顔で、彼が安心できるように。すると狩屋くんは「輝くんだいすきだよ」と笑いました。僕も、だいすきだよと笑いました。ほんとは泣きたかったけど、狩屋くんがしあわせならば僕もしあわせだと思うのです。


この恋は、ぼく以外がわからないように、鍵をかけて大切にしまっておこうと思います。捨てたりしません。だって僕は、狩屋くんに恋をして恋が終わったこの日のことをいとおしく思うのだから。



20121005
片想いっていいよね



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