宮坂は可愛い。女みたいに伸ばした髪もすぐ怒るところもさっきまで不機嫌だったくせにすぐに笑うところも全部が全部可愛い。短距離のタイムが伸びる度に俺に報告する宮坂はいつもきらきら輝いている。

宮坂を見ているとふと、俺が陸上部だったころを思い出し懐かしく思う。頬を伝う風、土の薫り、長く伸びた白線。陸上は常に自分との戦いだった。横にいるのは仲間じゃない。敵だ。俺はとにかく誰よりもはやく、速く。そればかり考えていた。タイムが伸びるのは気持ちが良かった。走り終わった後の汗を消し去る風が好きだった。でも、俺は一人だった。立ち止まって息をする。横には誰もいなかった。


「ねえ、風丸さん。僕、風丸さんの横で走って見たかったんです」

いつも後ろから眺めてるだけだったから。そう笑う宮坂はとても楽しそうだ。
なあ宮坂。俺は宮坂が一生懸命練習してるの見てるぞ。朝も夜も部活だって、ずっと走ってたよな。だから分かるんだ。宮坂、お前は俺なんかよりずっと早くなったよ。だからさ、宮坂。俺は怖いんだ。お前に負けてしまうのが。お前を置いていった俺がお前に置いていかれるのが。お前より遅い俺を、お前はきっと幻滅するだろう。

「そうだな、宮坂。じゃあまずは手でも繋ごうか」


そう誤魔化す俺に宮坂は顔を真っ赤に染めた。ほら、やっぱり宮坂は可愛い。俺にすぐ騙されてしまうのだから。臆病な俺に、ごめんな。宮坂、ちょっとだけ待ってくれ。



「俺がもっと強くなったら、一緒に走ろう」



20121004


ぐだぐたです とにかく臆病な風丸さんと自分の才能に気づかない宮坂を…



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