そういえば朝から具合が悪かったことを吐く10秒前におもいだした。必死にトイレに駆け出し、バン、思い切り個室のドアを開け鍵をしめる。おええ、胃液と一緒になって出てくる朝ご飯だったものを見つめながら俺はトイレの水を流した。なんともいえない不快感に何度も何度もうがいするが中々あの独特の気持ち悪さは抜けなかった。
なんで自分がこんなことになったのかと言うと理由は単純かつ明快である。俺の先輩のせいである。
ふたつ結びの甘い桃色にやたらと綺麗な白いはだ。吸い込まれそうなみどりの、おおきな瞳。俺はこの人が大嫌いだ。この世で一番苦手であると思う。艶やかな唇から吐かれる言葉。いやだ、聞きたくない。



『愛してる、神童』



ほら、そうやってあなたは抱き締めるんだ。神童キャプテンじゃなく、俺を。さいてい、だよ。霧野さん。あんたなんて、それでも嬉しい自分なんて、大嫌いだ。

そういうと霧野さんはにぃっと笑った。《好きって言えよ》そう霧野さんの唇が動く。俺はたまらずその唇をふさいだ。キスをしながら舌を噛みきってやろうかと思ったが彼がその舌を優しく絡ませて来たので、俺はまたまんまと流されてしまった。霧野さんなんか、消えてしまえばいい。甘いにおいに包まれながら俺はゆったり瞼を落とした。





20120811





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