「土門」

「どもん」

「どーもーんー!」






 頭蓋骨に響く、いつもの声。小さな頃よか幾分低くなったくらいで、ずっとずっと変わらない。気がついたら一之瀬は横にいて、いつも一緒だった。大事な友達で親友だった。俺は、この一之瀬との関係が大好きだ。だけれど、どうやら一之瀬と俺の考えは若干ながらも大きく食い違っていたのだ。






「おれ、土門のことがすきなんだ」






 ああ、そうか。俺も好きだよ。愛してる愛してる。アイラブユー。いつもなら軽くかわすところだがいつもよか何倍も真っ直ぐな一之瀬の目がそれを赦さなかった。どうらや、一之瀬の"好き"はラブとライクの前者の方らしいのだ。






「それって、友愛とかじゃないのか」
「いや、愛情」
「友愛を勘違い、とかじゃ」





 俺はどうやら友愛を大プッシュしたいらしい。だって、そうだろ。ずっとずっと仲が良くて、いつも一緒で、もしこれがアキとか他の女子だったら友達から恋人に変わるだけだけど、一之瀬と俺、それとこれとは全くもって違う。





(だって、おれたち)




「男同士だぜ?」







 一之瀬の視線から逃れるように斜め下を向く。傷つけたかもしれない。もう友達には、戻れない、かな。だけれど一之瀬はあっけらかんとし「そんなの、いまさら」と笑った。一之瀬はおれが思ってるより遥かにこの現状をしっかりと理解していたようだ。俺はあはは、声をあげて笑った。俺はずるいな。そんな思考が過ぎった。7月の風が俺達を優しく撫でて、過ぎ去って行った。











20100630




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