「ああ半田、半田はどうして中途半端なの?」

「なんだよいきなり!!」

「あーもう半田、そこは泣きながら僕の名前を呼ぶ所でしょ?ロミオとジュリエットよんだこと、ある?」




 やけに台詞じみた口調で手を組ながら冒頭の台詞を言うマックスにいたってノーマルな反応をする俺。アドリブ利かないなあ、マックスはまるで駄目といった調子で両手をひらひらさせた。こんなに毒舌なジュリエットを俺は見たことがない。大体、ロミオとジュリエットってさ、そんな台詞じゃあないと思うんだよね、おれは!正しくは「ロミオ、貴方はどうしてロミオなの?」のはずだ。それに、ロミオはそこで泣いたりしていただろうか。女子じゃないから熟読した事はないけれど、小さな頃見た記憶の限りでは確かにそうだった。それをマックスに聞いても、反応は至って薄かった。




「半田って普通」

「普通ってなんだよ。大体、それが正しい台詞だろ」

「アレンジだよ、アレンジ。僕たちはロミオでもシンデレラでもないんだから」




 んなことわかってるよ。そう言う俺にマックスは「頭が固い」と面白く無さそうに唇を尖らせた。なんなんだよ、もう。理由が理解らない。だけれど別に俺に落ち度はないと思う。むしろ普通だの中途半端だの言われ続けている俺は被害者よりだ。暫らく口を紡いでいたマックスが不意に口を開く。俺はその言葉に目を丸々とさせた。



「半田、半田はさあ、僕のために死ねる?」

「はぁ?」

「だから、死ねる?」

「と、突然なんだよ」

「うーん、僕だったらさ、後を追おうとする前にお医者さんに見せるなりなりたたき起こすなり、すると思うんだよね。だって、信じられないじゃない。愛してる人が、簡単に死んじゃったなんて、考えたくない。いくら心中を考えていたとしてもやっぱり、死ぬのは悲しいから、居なくなっちゃうのは辛いから、さ。変じゃない。綺麗に、生きてるままの形で、なのに、しんでる、なんてさ。まあ、結果的に死んでたら、もう諦めるしかないんだろうけどさ。」

「まあ、たしかにそう、だけど」

「だから、もし恋人が死んでも僕は死ねない。むしろいっぱいいっぱい生きて美味しいもの食べて、その人の分まで人を愛して幸せに命を全うしたいと思うんだ。たまに、その人の子と思い出してさ、それが、その人への弔いになると思うんだよね」

「・・・マックスってさ、大人だな」

「そう?薄情だと思うけど」

「おれなら、絶対マックスの後を追って死のうとするよ」





 俺はなんとなく笑みがこぼれた。俺だったら、馬鹿みたいに落ち込んで、自分が世界一不幸だ何て思って、自分の殻に閉じこもってしまうと思った。だれにも心変わりをしないで四六時中恋人のことを考えて、その人との思い出の場所に行って、泣きじゃくって。でも、いざという時死ねないんだ。そんな中途半端。死ぬのは怖い、から。それはきっと恋人のせいにして自分を悲劇のヒロインの如く見せて、そんな自分に酔っているだけなのだろう。人間って、ばか、だよな。笑う俺にマックスは意外な事に「半田はそれでいいんじゃないの?」と言う。「それって普通って事?」と聞く俺に、今度は飛びっきりの笑顔で「もちろん」と彼は言い放った。人生なんて、ベタなくらいが丁度いいんだよ。そう言うマックスの声は明るかった。









20100402
なにがかきたかったのか!




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