「あなたが」




 すきなんです。その6文字が口の中でぐるぐるまわって出てこない。おれはなんて根性なしなんだろうか。そんなことを片隅で思いながらおれは酸素を吸い込んみながらベットにぬいぐるみごとどすんと倒れ込んだ。





「もう病気だな」




 空気のように抜ける声。おれは自室の天井をゆっくり見上げた。そこにはただただ天井があるだけでしいんと静まり返るだけ。なんともいえない悲しさにおれは息を吐いた。それはおれの目に映ることもなく静かにきえてゆく。そして、ゆっくりとその諸行無常を噛み締めた。





「すき、なんです。つなみ、さん」
「つな、みさん」
「つな、み。さん」





 (ここにあなたはいないのに)おれはうわごとのようにあなたの名前を呟いた。この気持ちは、確実に愛だ。憧れなんかじゃない、おれは、あなたに恋をしてしまったんです。綱海さん。だけど、あなたはおれなんかの手が届く範囲内にいなくて、ずっとずっと上に居るんです。だから、おれはこの気持ちを押さえることにしました。でも、この胸の動悸は止まることをしらないでいまもどくんどくんと刻んで行きます。おれは、一体どうしたら良いのだろうか。それはきっとわかっているけれど、僕は一生この胸の痛みを背負って生きていくのでしょう。












20100515





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