「染岡くん染岡くんそめおかくーん」

「うっせえ、一回呼べばわかんだよ」

「だって、いつも一回じゃ反応してくれないじゃない」





そう笑うと染岡くんは不機嫌そうに唇を尖らせた。自分より随分大きな彼に(そんなところもかわいいなあ)なんて思う僕はきっともう末期なのだろうと感じた。それほどに、僕は彼のことが大切で愛おしいのだ。この思いは誰にも負けないと自負している。(なんて、嫌われるのが怖くて本人に言えるはずもないけれど!!)





「(アツヤにだって負けないよ)」

「ん?アツヤがどうしたって?」

「ううん、べつに」





染岡くんは「なんだよ」と言いながらも気にしない様子でゆっくり部室の奥に消えてった。その姿をゆっくりゆっくり噛み締めながらぼくは(アツヤは名前でよぶんだ、)なんていうなんとももやもやした気持ちになりマフラーをぎゅっと握りしめた。そんなぼくを戒めるようにひゅううう、開けっ放しのドアから冷たい風が頬を掠めた。3月の冷たさにぼくはなんだか寂しくなった。











20100309



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