「円堂、すきだ」




大好きな大好きな幼なじみはおれに向かって突然そう言った。俺は一瞬だけ戸惑うと「おれもだよ」と笑い視線をサッカーボールに落とした。そうすると彼はゆっくり髪をたくしあげながらばつの悪そうな顔をした(なんでそんな顔する必要があるんだろうか)綺麗な髪がきらきら太陽に照らされて風になびいていた。その光景がやけに艶やかで(あ、きれい)と思ったのをおれは鮮明に覚えている。






「そういうのじゃなくて」


「おれは風丸が好きだよ」


「ちがうんだ、円堂」


「それだけじゃだめ、なのか」


「円堂、円堂はずるいよ」






風丸はそう笑いながら髪を縛る。そして力無さげに右手を上げて振り向くことなく部室からでていった。微笑む彼の涙腺が今にも爆発しそうだったことをおれは知っている。それなのにしらんぷりするおれは最低だな、と片隅で思いながらおれは風丸の言葉を咀嚼する。(そうだな、おれはずるいよ)夕焼け空がおれを不格好なオレンジ色に染めていた。










20100307




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