一度だけ、たった一度だけ先輩と偶然出会った事のある道だった。我ながら完璧な乙女思考が働く。(また先輩に会えるんじゃないかな)なんていう根拠のない一方的な考えが頭を過ぎった。


だけどドラマみたいに上手くはいかないのが現実で、おれは(ばっかみたい)と心の中で呟くとiPodの音量を思い切り上げて、もと来た道をすたすたと戻り始めた。がんがんがんがん、頭に響く音がただただ不快だ。不意に携帯が鳴る。先輩限定の着信メロディ。ヘッドホンをして音をおもいきり上げても分かるなんて俺はどれだけ先輩のことがすきなのだろうか。おれは普段の何倍もの速さで携帯をとった。


「も、もしもし!」

「あ、成神か?」

「いきなり電話なんて、大胆だね。せんぱい」

「ずいぶん不機嫌そうだな」

「別にー、ただ、先輩に会いたいなあ、なんて」




「・・・実はお前の後ろにいるんだが」



おれは光の速さで振り返ると電光石火の勢いでおもいきり先輩に抱きついた。ロマンスなんて待つものじゃない。逃げないうちに、自分の手で掴み取るものなのだ。




「先輩、だあいすき!」






20100217






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