殺生丸さま、りんね、今日可愛いお花を見つけたの。桃色と紫色のおはななの。折ったところのつゆが少しだけべたべたしたけれど、摘んだ瞬間ふわあっていい香りがして、殺生丸様にも嗅がせてあげたかったなあ。あのね、殺生丸さまに持ってきたけど、少し匂いが薄れちゃったの。でも、殺生丸さまはお鼻がいいから、りんが初めに嗅いだときと同じくらい良い匂いがするかなあ。そこまで言うと邪見さまがまたいつものように「いいかげん黙れりん!」と怒鳴った。殺生丸さまは迷惑しているいと言うけれど、殺生丸さまはじいっとこちらを見ている。すこしお鼻がぴくぴく動いた気がした。それに、前よりもっともっとふんわりと見ていてくれるように感じる。それはまるでずっと昔にお父とお母から受けたような懐かしいあたたかさと似ている気がした。



「殺生丸さま」

  

 殺生丸さまは軽く視線だけりんの方に向けると「何だ」と短く呟いた。長くて綺麗な髪。少し怖いごつごつした鎧にふわふわの毛皮。真っ白いお顔は柔らかくてとても綺麗で、わたしはどきりとする。



「りんね」
「・・・」
「殺生丸さまのこと、だいすき!」




 殺生丸さまは視線を戻して「そうか」とだけ呟く。殺生丸さまって、恥ずかしがりやさんなのかなあ。そう聞くと邪見さまは「恐れ多い!」とまたわたしに怒鳴った。いつも邪見さまは怒ってばかりな気がする。それでも、とても楽しいのはなんでなんだろう。ああそうか、これが幸せなんだ。殺生丸様がいて、邪見さまがいて、わたしがいる。生きるって素晴らしいことなんだ。ずっと、ずっとこうやって3人で過ごせたらいいのに。そう笑うわたしに殺生丸さまは何にも言わず、ただただ空を見上げた。あたたかいお日様が、じんわりと肌にしみていくのがわかった。







20101213





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