「なあ良牙」 「なんだ」 「お前、本気であかねのこと好きなの、か」
何を当たり前のことを!そういうと乱馬はなんとも情けない顔をした。なんでお前がそんな顔をするんだ。立場上不利なのは断然俺のほうだろうが。そう言う俺に乱馬ははあ、ため息をついた。
「なんであんな可愛くねー女」 「あかねさんを侮辱するな!」 「おれの方が良牙のいいとこずっと知ってるつもりだぜ?」 「はあ!?」
?おかしい、なんで俺のことを知っているという事になるのだろうか。そこは普通、あかねさんじゃ、ないか?
「お前、おかしいぞ」 「おかしくねえよ」 「いや、おかしいって」
(これじゃまるで)
「おれ、良牙のことが好きみたいなんだ」 「冗談はよせ」 「いや、おれもよく分かんないんだけどよ」 「・・・お前、ついに取り返しがつかないくらいの馬鹿になったか」
なんだかこんな乱馬を前に見たことがある気がする。ああアレだ、思い出すのもおぞましい、恋の釣竿だ。あかねさんと間違って乱馬を釣って、本気で恋心を抱かれてしまった、あのときに似ている。「お前また変なものでも食ったり使わされたんじゃないのか?」そう聞くと乱馬はどうも腑に落ちない調子で頬を人差し指で掻いた。
「そうでもないと思うんだよな」 「じゃあ、なんで」 「お前のこと、どうもほっとけねーんだよ」
そういえば、迷子になったときいつも助けてくれたのは乱馬だった。すぐにちょっかいかけてくるのも乱馬だったし、俺の日常はこいつに会ってからどうもこいつが満ち溢れていた。俺個人としてはとても憎たらしい事である。しかし今までのあれこれが、すべて愛情ゆえの行動だとしたら。俺はどうやってこいつの顔を見ればいいんだろうか。
「でも、いきなり言われても」 「ああ」 「おれ、こういうの慣れてないし」 「それは俺がいちばん知ってる」 「でも、おれにはあかねさんが」 「見込みが0ってことはないだろ?」
顔が近づく。キスでもされるのかとぐっと目を閉じたが人差し指で軽く額を突かれただけだった。予想外の展開に、俺は情けない声を上げた。
「・・・へ?」 「・・・なんだよ、キスされるとでも思ったか?」 「・・・!!!」
ふざけるな、からかうな、馬鹿野郎!数々の罵倒と俺の攻撃をひょいひょいかわしながら傲慢な笑顔を見せる乱馬に、俺は顔を真っ赤にして怒鳴り散らすしかなかった。
20101213
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