『いい加減、僕の膝の上ですすり泣くのはやめろ』
僕はぽかん、しんのすけの頭を叩いた。少しばかり痛いらしくしんのすけは涙目で頭を押さえている。奴は僕のことを『酷い』だの『鬼』だの好き勝手に言ってるが自分より体型のいい男にひざに擦り寄られ、あげくに30分泣かれて怒らない方がおかしいと思う。
「あのね、風間くん…聞いてくれる?」
「ああ、何回も聞いたさ。 ひまわりちゃんに『これ以上他の女の子と遊ぶならもう口をきかない』て言われたんだろう?」
「言わないでよ……。あーショックー…もう駄目。生きていけない…」
体育座りで落ち込む奴を尻目に(なら他の女の子に手を出さなければいいのに)とは思うがきっとこいつにそんなことは無理なのだろう。幼稚園からこいつはこんな調子なのだ。きっとDNAに女好きの遺伝子が組み込まれているに違いないのだ。
「そんなに悩むなんて、しんのすけにとって、ひまわりちゃんは他の女の子と同じくらい大切なんだな」
「当たり前。たった一人の、かわいいかわいい妹ですから」
「それ、ひまわりちゃんにいってやれよ」
「毎日言ってる。で、馬鹿とかキモいって言われる」
「ははは、正解。」
「かざまくん、ひっどーい」
不意にがくん、視界が変わった。天井が見えて近くににっこり笑ったしんのすけの顔が見える。そして僕は目を閉じながら(ああ、またこいつは妹に怒られるな)と頭の片隅で思い、つい微笑んだ。
シスターコンプレックス
20100131
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