「ボーちゃんって今でもよく鼻水たれてるよね」 「まだ石、あつめてるの?」 「・・・駄目、かな」
独特な声色でそう眉毛を下げるボーちゃんに僕は「昔と変わらなくて嬉しいよ」と笑う。そうするとボーちゃんはふんわりと笑いながら「マサオくんも変わらないよ」と呟いた。
「そうかなあ」 「うん」 「例えば?」 「泣き虫な所、とか」 「えっ」 一気に涙目になる僕にボーちゃんは「ほら」と笑った。「あ!」と短く呟く僕にボーちゃんはおなかを抱えて笑い始めた。 昔ほど泣き虫じゃないよ!と一喝する僕の話なんてきいちゃいない。僕はあきれた調子で外を見上げた。いつも遊んだ公園、いつも遊んだブランコの上なのになんだか場所が違うみたいだ。僕はいきなり悲しくなった。
「ぼくらさ」 僕の声が寒く乾いた公園に響いた。今時の子供は公園で遊ばないらしい。今此処に居るのは僕ら2人だけだった。
「大人に、なったんだね」
なんだかすごく寂しい気分だ。ずっと一緒に入れると思っていた幼稚園の頃。僕らは小学校中学校高校とみんなばらばらになった。しんちゃんは来年から就職だしネネちゃんは専門学校、風間くんとあいちゃんは有名な大学に、ボーちゃんもまた大学に進んで石の研究をしたいらしい。僕だけだ、何も決まっていないのは。気がついたらぼくは17歳になっていた。取り残されるのが怖くて怖くて僕はどうにかなってしまいそうだ。 「まだ子供だよ」
ボーちゃんはそう呟いた。ボーちゃんの横顔はとてもキラキラと(鼻水のせいもあったかもしれないけど)輝いていた。それはなんだか僕の中にじんわりとつたわってくる。つまりは嬉しかった。子供なのは自分だけじゃないと言ってくれたみたいでなんだか幸せだった。ボーちゃんは「幼稚園のときと同じことばっかやってるよ、みんな」と笑った。そういえばしんちゃんは昔からナンパばっかりやっていたしネネちゃんは怒ってばかりいた。風間くんはいつも勉強していたしあいちゃんはしんちゃん一筋だったしボーちゃんは石ばっかり見ていた。そうか、何にも変わってないんだ。僕はまた嬉しくなって思い切りブランコをこいだ。
20101213
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