静かにあいちゃんの声が響く。きれいなきれいな声だ。真っ白な肌も桜色の頬も真っ直ぐな瞳もサラサラの髪もみんなみんな綺麗。いまおもえば僕の人生はあの、幼稚園に愛ちゃんが転園してきたあのときからあいちゃんが中心に回っていた。どんなに無下にされても振り向いてもらえなくても、この気持ちは変わらなかった。なんでだろう。ネネちゃんの我儘とあいちゃんのわがままでは、断然ネネちゃんのほうが嫌だった。やわらかさの違いもあるだろうけれど、僕は断然愛と友情の違いだと思う。こう思っていた事を知られたら僕はネネちゃんのしあわせうさぎ二号になってしまう。




「どうしたの?あいちゃん。公園なんかで」
「しんさまが全然振り向いてくれないんですの、あいに魅力がないのかしら」





 いや、魅力はありすぎるぐらいだと思うよ。しんちゃんが特殊なの。そういう僕にあいちゃんはふう、ため息をついた。「座りたいですわ」あいちゃんの声とほぼ同時に僕は上着を脱いでそっとベンチの上に置いた。あいちゃんのスカートがベンチなんかのせいで汚れたら、僕はきっと憎しみのあまりこのベンチを明日の粗大ゴミに出しに行くだろう。






「ありがとう、気が利きますわね、マサオ」
「いえいえ、なんのこれしき」






 にこ、僕に向けた僕にだけの微笑み。顔が緩む。こういう瞬間が、たまらなく幸せなのだ。たとえ結ばれなくても、それでいい。本当にそれでいいのか!?と思われるかもしれない。確かに僕だってあいちゃんと恋人になりたいしキスしたい。だってあいちゃんはしんちゃんが大好きだから、僕なんかかないっこないのだ。振られて傷つくよりも、きっとこのほうが幸せ。だから今のこの状態が、僕は大好きだと思う。





「マサオ−!いきますわよ」
「うん!」






 それに、僕はこの関係が案外気に入っていたりするのだ。だって、僕はあいちゃんに恋をしてしまったから。あの日から、ずっと。










20110112
下僕根性丸出しのマサオくんが好きです




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -