「キスして」





そう笑う彼はやけに自嘲した表情で私の肩に腕を回した。私は訳もわからないまま袋ごしに唇を奪われ(して、といった割には自主的にしてきましたね)、そのままどさり、押し倒された。(え、なんで。わたしなんだろうか)そんな状況にも関わらず私は目の前でカクテルで酔って眠っている首領が風邪を引かないか心配だった(マント一枚じゃ寒いでしょうに)が、彼はそんなわたしに気にも止めず私の上に馬乗りになった。





「ちょ、なにを」

「なにって、そりゃあ…ね?」

「え、ちょ、ひぁ」




アルコールのせいで火照った首にひんやりした感覚か走る。それは刃物なのか彼の唇なのかわからないほど冷たくて無機質だった。ここで大声をだしたり彼の脳をおもいきり撃ち抜いたってよかったけれどこんな近くに首領がいるのに、そんなことできなかった。身体を蝕む唇に、ただただ堪えるだけ。気がおかしくなりそうだ。袋を被っていてよかった。こんな顔、見られなくて済む。(彼は私がきっと嫌いで嫌いで仕方ないのだろう、酷い嫌がらせだ。そうでなければ、こんな)





「きみはほんとうに首領が好きなんだね」

「当たり前です、よ」

「ほんと、むかつくなあ」

「…貴方は、わたしがすきなんですか」

「まさか、僕はにーに一筋だよ」




そう言ってベルトを緩める彼の顔は、やけに明るくて、わたしはなんとも複雑な気分になった。(そうならばいまからするであろう行為は兄への裏切りになるのではないのか)なんで、わたしにこんなことするのだろう。(ぐるぐる、廻る。なんなんだろうか、この少年は)









20100305
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需要なにそれおいしいの





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