梓、梓!仕事が休みのときのパパはいっつも可愛い。ふにゃあ、情けなく眉をたらしながら笑うパパを見ると、今朝きりっとした顔で出て行ったあの人は誰なのかしら。大分不思議なところである。洋くんや緒方くんはいっつも、オフの日のお前気持ち悪い!なんて言うけど、わたしはどんなパパも好きよ。そう言うとパパは顔を真っ赤にして「そうか」とだけ言う。梓に、「梓ちゃんもどんなパパも好きよね」と聞くと「うん!」と元気良く答えていたのを見た時は満面の笑みでくるくる梓を抱えて回っていたのにわたしにはそっけない。ほんと照れ屋さんなんだから、そう言うと照れてない。と軽く(多分洋くんが受けたら5mは吹っ飛ぶなあ)おでこを小突かれた。別に抱っこして回って欲しいなんていわないけれど、なんだかちょっぴり寂しい気がする。たまにはわたしの方を向いてくれたっていいのに。そんな思いが過ぎるけどわざわざ言う事でもないし別にやきもちを焼くほどのことでもないのでそれは胸の奥にひっそりしまっておく。それに、わたしはまだ食器洗いと洗濯物が残っているんだから、頑張らなくちゃ。パパは日中一生懸命働いてきてくれるんだからわたしは精一杯主婦業をこなしたいと思う。







「ふう、洗濯物取り込まなきゃ」







 今日の洗濯物はやたらと多かった。かご一杯に溢れて、視界が悪い。渡りなれた階段さえも、危なっかしい。でもこれをこの後たたんで、しまってとまだ仕事が残ってるのだから泣き言を言ってる場合ではない。中身は布だからそこまで重いものじゃないけれど、疲れたわたしには充分だった。





「あっ」




 つるり、足を滑らせた。靴下って駄目ね。今度から滑り止め付きの靴下にしなきゃ。あーあ、せっかく洗濯したのに床に落としちゃうなんて。普通だったらパニックしちゃうところなんだろうけど、ありがたいことにわたしは丈夫なのでさほど心配はしてなかった。でもさすがにちょっと痛いかなあ。ぎゅ、目を閉じて身構えた瞬間だった。





「・・・あれ?」






 全然痛さも感じなければ落ちた感覚もない。ゆっくり目を開けるとわたしはまだ階段の上に居て、浮いていた。後ろからふう、低いため息が聞こえた。パパだ。がっしりと腰に回された腕はがっしりとわたしの身体を支えていた。さすが力持ち。下では梓ちゃんが洗濯物をひとつも零さずキャッチしている。さすが親子だなあ。わたしは思わず感心した。ゆっくり床に足がついたと思うと今度は怖い顔をしたパパの怒鳴り声が頭上から降って来た。





「馬鹿!危ないだろ」
「ありがとう、助かったわ」
「怪我でもしたらどうするんだ」
「しないわよ、丈夫だもの」
「こういうときは、俺に言え」
「ええ、ありがとう」
「俺が見てなかったら、どうなってた事か」
「・・・見ててくれたの?」


「・・・・心臓が止まるかと思った」







 そう言ってパパは、邦治さんは、ゆっくりわたしを抱きしめた。もう、格好良いなあ。惚気じゃないけど、心底そう思った。邦治さんはわたしと梓のヒーローなのだ。強くてカッコよくて優しくて、かわいいかわいいヒーロー。「パパったら心配性なんだから」はにかみながらそう言ってその広い背中に腕を回し返す。そんなわたしの額に、パパはゆっくり唇を落とした。

















20110113
こんな夫婦になりたいです!鉄人夫婦萌え鉄人家族萌え!





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