俺が先だ!いや俺だ!俺たちは何でもすべて張り合った。俺がちょっかいをかけているうちにあいつはあいつで負けず嫌い精神に火が付いたのだろう。最初はオッサン臭い奴だと思っていたが、親しくなってもやっぱりオッサン臭かった。いいとこ、そうだな。あいつの家にかわいいかわいいシベリアンハスキーがいることくらいだろうか。ゴローちゃん、可愛いなあ!そういってゴローちゃんに擦り寄ってたら荻の奴に気持ち悪いと一喝された。失礼な奴。俺モテるんだからな!足早いし!チョコの数教えてやろうか!そう言う俺に荻は五月蝿い!と思い切り怒鳴った。俺は、持久走では荻のほうが勝つ事も知っている。軟派な俺とは違った硬派の魅力というのか、なんだかんだで実は俺と同じくらい影でモテていることも、俺は知っている。荻は背が高くてごついから、嫌でも目立つ。教授に「お前ら2人で並んでるとなんか、迫力あるな。案外、お似合いかもな!」そう言われて荻がすごく嫌そうな顔をした。だけど俺は不思議と嫌じゃなかったし心なしか嬉しかったことをよく覚えてる。俺は大分荻をからかうことが大好きらしい。綺麗なお姉さんに「ねえ、緒方くん。今日うちに泊まりにきなよ」と色っぽく囁かれても友達に「今日は飲み明かそうぜ!」と言われても、俺は(今日は荻にどんな嫌がらせをしようか!)(網で捕まえる?それとも!)なんて議論で頭が一杯だった。






「そうそう、荻の奴がさぁ」
「緒方、お前ほんとに荻野大好きだな」
「え」
「だって、口を開けば、荻荻って、な!」
「そうだよな。昔から、こいつの口から荻野と犬の話が出ない日はないよ」





 上は久しぶりに会った大学の時の友人と飲んだときの会話だ。この後、俺は三日三晩悩み続けた。おれが、おぎを、すき?好き、すき?からかうのが、じゃなくて、荻自身を、好きなんて、まさかそんな。でも当てはまるのはいくつもいくつもある。(俺がもし好きな子にはちょっかいをかけたいタイプだとしたら。)(四六時中荻の事考えてしまうのは、まさか恋!?)(いやでも荻はオッサン臭いし)(妻子持ちだし!)俺の脳味噌はショート寸前だ。もう、どうやって荻に顔を向けたらいいのか分からない。ステラに「荻の事どう思う?」と聞いたら「ちょっとこわいけど、やさしくて良い人!」と答えていた。どうしよう。後半部分だけならすごく理想な恋人じゃないか。恋人!?いや、べつにそんな関係でもないし荻からしたら俺は悪友またはそれ以下だろう。どうしよう。なんだか俺のあたまはこんがらがっている!洋に「良い精神科はないか」と聞いたら「お前の単細胞を治せる医学は残念ながら現代社会はおろか全宇宙にも存在しない」と冷たく吐き捨てられた。泣いてもいいだろうか。もういっそ開き直って荻に好きだと叫ぼうか。いやいやそんなの俺がフられるに決まってる。そんなの俺が負けたみたいでなんだか悔しいじゃないか。・・・あ、そうだ!






「荻」
「なんだ」
「俺が三日三晩寝ずに考えた結果なんだが」
「ステラがお前がひとりでずっとしゃべってて怖いと泣いていたぞ」
「まあ、聞いてくれ」
「なんだ」
「俺、お前が好きだ」
「死ね」
「まあ、そう言われる事は想定内だ。痛くも痒くもない!」
「なんかいつも以上に意味不明だぞお前!」
「お前はきっと俺の好きを友愛と思っているのだろうけれど、残念ながらおれのすきはどうやら恋愛対称らしい」
「はぁ?」






 そういう荻に、俺は自信満々に「だから」と続けた。だから、俺は絶対諦めないぜ。お前が俺に振り向くまで、永遠にちょっかい出し続けてやる!地球の裏まで追っかけてでもからかい続けてやるからな!そう笑う俺に荻はあきれたのか、溜息をついて「上等だ」と微笑んだ。






「あとで俺にメロメロになっても知らないぜ」
「誰がお前なんか好きになるか」
「俺のイケメンパワー舐めるなよ!」
「家族の絆は固いんだ。バカ」
「はは、また俺ら」






 意地の張り合いしてるな。そう言って俺は吹き出した。荻も少し笑う。お前、意地張ってないでもっと笑えよ。そう言う俺に荻は「こういう甲斐性なんだ」と笑った。綺麗な綺麗な笑顔だ。俺はどきりとした胸を抑えながら、やればできるじゃん。そう言って、今度は大きく吹き出した。


















20110113
いい大人がなにやってるんだか
わたしはこういうあほな緒方が好きです







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