お前は俺の気持ちに気付いてはいないと思う。いいや、それでいい。それでいいと俺は思う。その鈍感さに何度救われたか分からない。お前が俺を疑う事をせず、相棒として愛してくれるから、おれはこうしてなんだかんだ幸せに過ごせていけるのだと思う。だって、お前が相棒であるおれを、嫌いになる事なんてありえないとおもうからだ。大した自信だと思うかもしれないがこれは全く確かなことだ。大体、素直すぎるこいつが嘘を付くわけがないし嫌いなやつにしょっちゅう顔を合わせようとなんてしないはずだ。それに、俺は残念ながら狼男なのでこいつと俺との意思は反対にこいつが俺をいかに相棒として大切にしてるかがひしひし伝わってくる。今日「飲みに行こう」と誘ってくれたのだって俺のことが相棒として大好きだからだ。それは嬉しくも悲しいことで俺は涙を精一杯気づかれないように笑うことしかできない。そんなとき、決まってこいつは何にもいわずぐりぐり頭を撫でて背中を貸してくれる。その優しさがあまりに痛くて俺は涙が溢れるのを必死に我慢した。すきだよ。荻。すげえ、すき。俺の思いはきっと届かない。でも、それでいいと思う俺がいる。荻が「家に来るか?」と静かに呟く。若葉も梓も大好きだけど、なんだか今荻の家に行くとなるとふたりが憎く思えてしまいそうで仕方がない。すきなひととすきなひとが愛した人とその子供。今日の俺はきっといつまみたく笑えない。自分が汚いゴミのように感じた。俺は今、出来るだけ明るい声で「今日はいい」と言った。荻は短く「そうか」というとまた頭を撫でた。広がる荻の匂い。優太なら臭い!と一喝する所だが、俺は嫌いじゃない。むしろすきだと思う。





「じゃ、俺帰るわ」
「送ってこうか」

「いい。お前もさっさと帰れよ、子持ちのオッサン」














 そういって店をでる俺に、荻は静かに手を振った。ガチャン、店のドアを閉めた途端留め金が外れたかのようにぽろぽろ涙が零れてきた。ここまで我慢した自分を、俺はうんと褒めてやりたいと思う。ばかみたいにとめどなく落ちるそれを手の甲で拭って白い息を吹きかけると、それは少し揺れて地面に落ちた。












20110111





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