「俺、恋しちゃったかも」

「はあ」

「緒方さんも人間のこと好きになるんですね」







 緒方さんはとても唐突な人だ。いきなり「相談にのってくれ!」と押しかけてきたかと思うと俺と優太くんを無理矢理(いや、正式に無理矢理引っ張ってきたのは緒方さんの”ケーキ奢るから!”という言葉に釣られた優太くんなのだが)喫茶店に連れてきたかと思うと少しもじもじして、「あの」だの「その」だのと自分でいってきたのにもかかわらず言葉を渋らせた。とうとう言ったと思ったらそんな突拍子もないことを言う。





「俺こんなに人を好きになったの初めてでさ、どうしたらいいかわからなくて」
「大人に恋愛相談される俺らの身にもなってください」
「ね、圭くんそっちのチョコ少し貰っていい?」





 優太くんに限っては聞く気もないらしい。目の前のショートケーキと横の俺のチョコレートケーキを見比べながらキラキラと目を輝かせている。俺の「全部食べていいよ」そう言うとその声を待ってましたといわんばかりに優太くんはチョコレートケーキにフォークを突き刺して口の中に放り込んだ。こういうの、絶対優太くんのほうが得意だと思うんだけどな。残念ながら俺の思いはこの美少年には届かない。




「気が付いたら俺、そいつのことばかり考えてるんだ」
「あの、それ庵さんに相談したらどうですか?」
「だって、イオリン心なしかめんどくさそうなんだもん」
「ああ・・・」





 さすがに他人には多少は愛想のいい庵さんだがなんとなくこの緒方さんを目の前にした彼の顔が安易に想像できた。多分今の俺と全く同じ顔をしているに違いない。ひとりで照れたり笑ったり泣いたり、忙しい人だ。一言で言えば、そう。限りなくウザい。この29歳、すごくウザい。






「でさ、どうしたらいいか相談したくて」
「はあ、」
「他に相談できる人いないんだよ」
「すみませーんストロベリーパフェとチーズケーキと、コーラフロートください」
「・・・・優太はこの調子だし、さ」




 嬉しそうにどんどん空き皿を増やしていく優太くんに、俺は眩暈がした。ここまでガッツリ食べられてしまったら俺が責任もって話を聞くしかない。そんな悲しい使命感に駆られながら、俺はゆっくりカフェオレを飲み干した。

















20110113
誰に恋したかはご想像に





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