「ね、にーに」

「なんだ?遥」

「……なんでもない」





(あそんで)といいかけた言葉を飲み込むと僕はとびっきりの笑顔をみせた。眠たそうに真っ赤な目を擦る兄に僕はなにも言えない。にーににうっとうしい、いなければいいと思われるのがただただただいやだった。居場所が失くなってしまうのか怖い。にーににかぎってそんなこと言わないとはわかっていたけれど、小指の爪ほどでもそう思われると思うだけで僕の笑顔は壊れそうになる。にーにがもし居ないなら僕はきっと酸素が足りない金魚のようにゆっくりゆっくり死んでしまうのだろう。そしてゆっくりゆっくり輪郭が融けていって、消えてしまうのだろう。






「にーに」

「ん…?」

「すきだよ」



すぅ、静かな寝息が聞こえる。きっとにーにには僕の声なんか届いていないに違いない。それほどに僕はちっぽけでいらない存在なのだと確信した。チクチク刻む時計の音がやけに速く大きく聞こえる。僕は頭を押さえながら声を殺して馬鹿みたいに泣いた。ぜーはー、空気を吸うのも吐くのもやり方を忘れた。ああ、酸素が足りない。僕は霞む意識の中、(このまま冷たくなるのも良いかもしれないな)と笑った。









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -