「好きだよ、円堂くん」
「それってさ、本気?」
いたって真剣な表情で彼は呟いた。僕の目を見てよ、どこが冗談だっていうの?と笑うと彼はそうだな、と釣られるように笑い僕をぎゅっと抱きしめた。一瞬僕は戸惑うが土と汗の入り混じった香りがやけに心地好くて、そのままゆっくり身をゆだねた。
「冗談っていうのを期待してたんだ」
「ひどい、そんなわけないじゃないか」
「ずっとおれの目だけが好きなんだと思ってた」
「目も顔も性格も横隔膜まで好きだよ」
「ごめんな、気がつくのが遅くって」
僕は控えめに彼のユニホームの背中の部分をにぎりしめた。彼は僕の背中をまるで父さんみたいにぽんぽん叩く。彼からはけして好きという単語は降ってこない。でも身体にに伝わる温もりは夢でも幻覚でもなく確かなものだった。ぼくはやっとつっかえていたものがとれて息ができた気がして、そんな鈍くて優しい円堂くんもだいすきだよとわんわん泣いた。
20100307
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