オスカー様が嘘をついている時は、
ほんの少し瞳が揺れて、私を見つめてくるの。
「オスカー様っ‥てば、もうやめてくださいー!」
アンジェリークの怒号が飛び交う部屋は、炎の守護聖オスカーの執務室。
熱っぽい視線で、彼女を見つめるオスカーをぐいっと両手でおしかえす。
「オスカー様ってば、最近変ですよぉ!」
ブラウスのボタンをとめ直しながら、アンジェリークルは困った声を上げた。
前までーーそう、先週の日の曜日のデートまで、軽口を叩いてからかうことはあっても、こうして熱のある視線で壁に追い込まれてみたり、甘い雰囲気に取り込まれそうになっていると、いつの間にかブラウスのボタンを外されていたり。
正気をたもてなくなるのだ、オスカーの顔が近づいて、名前をよばれると、とても立っていられない。
「わたし、わたし‥っその、お、オスカー様ってばぁ!」
全く聞いていない。
アンジェリークは、先週の土曜日に、突然誘いに来たオスカーの来訪を思わず受け入れてしまったのだ。
デートの場所は、もちろん、森の湖。
音楽が流れる滝のある森で、第二段階を迎えたのだ。
告白をするつもりだったが、舞踏会が二回目を過ぎた頃に急に選択肢に告白する、はなくなり、森の湖にいくと突然オスカーが思いを打ち明けてきたのだ。
「アンジェリーク、俺は君に受け入れてもらって幸せだし、君もそうじゃないのか?‥お嬢ちゃん」
苦笑してアンジェリークを抱きしめるオスカーに、抱かれた当人はオロオロするばかりだった。
「俺は君を愛している。そう伝えただろう?‥本当はもう、お嬢ちゃんではなく名前で呼びたいんだ、アンジェ」
「オスカー様、なんか人が違いすぎてついていけません!!」
「俺は元々こういう人間だぜ?お嬢ちゃんには見せられなかっただけだ」
ほら、こっちを向いて。
と顎を引き寄せられると、アンジェリークはむぎゅっと目をつむった。
やられる。いろんな意味で。
ーーー‥
どれくらい待っていただろう。
アンジェリークは確かにオスカーのため息を聞いた。悩ましいため息をついたあと、顔が近づいてきたのを気配で感じたのだが、その後、オスカーの吐息がアンジェリークの耳たぶをかすめたあと、彼女の肩に額を置いたのを感じた。
「‥オスカー様?」
アンジェリークが問いかけると、オスカーが囁くように伝えた。
「‥ちょっと待ってくれ、お嬢ちゃん‥俺はいま、我慢してるんだ」
「が、我慢、ですか‥?あのっ、オスカー様、わたしどうすれば‥」
オロオロと肩に寄せられたままのオスカーを、やはり目を開いてみることが出来ずに、アンジェリークルは顔を真っ赤にして問いかける。
彼の事情は彼女にはわからない。
ラブラブエンディングまであと一度森の湖にいくのを待たねばならないとか、
夜のお誘いのためにここで終わらせられない男心は、まだアンジェリークにはわからなかった。
ちゃんちゃん
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はい、尻切れトンボですが、ナチの見た夢です。
こんな夢みたんですよねー!
二段回目を迎えたあとの、ラブラブエンディングまでのお手紙とか、大好きです。