(社会人未来捏造話)

「ほんとにこんなんでいいのか?」

「もちろん」



昼だというのに小雪がちらつきそうなくらい寒い。公園のベンチで赤い手袋に包まれた手を擦ってはぁ。と真っ白に色付いた息をかけた。
公園には普段いるちびっ子達の姿すらない。原因はここ最近近づいている大寒波のせいなのだが。
微妙に浮いた足をパタパタと動かしながらねっ。と跡部に笑いかけた。



「景吾仕事大変だから」

「悪ぃ」

「ちょっと会えるだけでも幸せなんだ。私」



跡部はいつまでも抜けない彼女のあどけない笑顔に苦笑いを浮かべた。彼女はこう言ってくれているが昔から部活だなんだと言ってろくに恋人らしいことをしていないのだ。こんなことを言うのも何だが俺は正直彼女には捨てられても何もいえない。
ただ俺自身、彼女のこういったところに甘えていたりするのだ。
寒そうに擦っている手を掴んでやれば名前は少し照れくさそうにだけど嬉しそうに笑った。




「だけど公園だぞ?」

「会うだけなのにお金かける必要ないよ」

「食事は?」

「私が作ってあげるよ」

「それでいいのか?」

「景吾は私のご飯嫌い?」

「…いや。そっちがいい。」

「でしょ」




にこっと笑う彼女は魅力的。
他の奴らからみたら俺は馬鹿みたいに映るのかもしれないが彼女は冬の日の暖かい毛布のような包容力に春の日の柔らかい日差しのような言葉や行動でいつもこうして俺のそばにいてくれる。
こうして何も飾らないカッコ悪い俺が成立しているのは彼女あってだ。
少し甘えるように名前の肩に頭をゆっくりと乗せれば名前はガキを扱うように俺の頭を撫でた。俺をガキ扱いすんのもこいつだけだな。




「景吾は何が幸せ?」

「…そうだな。」




こうして2人並んでいられる何の変哲もない昼下がりが幸せ。そう答えれば彼女は立ち上がって帰ろうと笑った。名前が笑っていられる空間に静かに目を閉じながら小さく囁いた。それは彼女の距離にいないと決して聞こえない5文字。



愛してる。


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寒さの腹いせ。寒い。
20120127 榛