『大人になった弦一郎は強いかな?』
『鍛錬を怠らなけれはきっと強いだろうな。』
『名前のこと守ってくれる?』
『あぁ。俺はずっと名前のことを守り続けるぞ。』
『弦一郎は剣道好き?』
『無論、好きだぞ。』
『じゃあなんで道場辞めちゃうの?』
『俺はこれからはテニスをやるのだ。名前のところの道場は辞めてしまうが稽古は辞めない。』
『そっか…。またいつでもうちに遊びに来てね。』
『夏の朝は気持ちがいい。朝稽古をするにはもってこいだ。名前もやるといい』
『毎日やったら弦一郎とまた会える?』
『そうかもしれないな』
『わかった!!!じゃあ毎日やる!!』
キキーッ!!!!
『名前!!!!』
バーーン!!!!

「夢…か…」

朝4時。夏にはもう明るくなって良い風が吹いている。ちょうど10年前の今日、真田は名前の家の道場を辞め、名前はこの世を去った。

「なんで今更こんな夢なんぞ…」

そう呟きながら道着に着替え、竹刀を握る。精神を統一し、まっすぐに剣を振るい一歩前に出て、敵を仕留める。今度は一歩下がり敵を仕留める。

「ふぅ…そろそろ朝食の時間か…。」

朝の日課を終え、学校へ向かい教室に入るとクラス中がざわついていた。どうやら転入生が来るらしい。

担任と一緒に来た少女を見た瞬間真田は固まった。

「苗字名前です。よろしくお願いします。」
「席は真田の隣だ」
「はい。」

死んだはずの人間が目の前にいるのだ。そりゃそうだろう。

休み時間。

「久しぶり、弦一郎。」
「あ…あぁ。」
「本当に名前なのか?」
「うん。」
「しかしお前はあの時」
「そうだよ。でも弦一郎にひとつ言えていないことがあったからね。言えるようになったら成仏する。」
「そうか…」

無理矢理納得をすることにした真田は次の授業の準備を始めた。

数日たち、名前もだいぶクラスに馴染んだ。しかし名前が消えるような感じは全くしない。成仏できない原因が自分にあるなら何とかしてやりたい。真田はそう思っていた。

放課後

「ずっと気になっていたんだがお前が俺に言い忘れたこととは何だ?」
「だめ。そのときにいわないと意味がないから今は言えない。」
「そうか」
「でも本当は早く言ってあげたい。だから私が言いたいことが言えるように頑張って」

そういい残すと名前は行ってしまった。

8月23日。全国大会決勝…

立海は負けてしまったがそれぞれの思いを胸に家路につこうとしたとき、名前は現れた。

「名前…」
「お疲れ様。自分の士道を貫いた弦一郎らしい、いい試合だったね。」
「ありがとう。」

どうやら例の時が来たようだ。

「全国大会準優勝おめでとう。…って言いたいのはそれじゃないのにな…」
「すまん…」
「なんで弦一郎が謝るの。」
「いや…」

話しているとみるみるうちに名前の体は透け始めた。

「やばい…時間が…」
「名前…向こうで悩んでいたりする事があればいつでも来い。夢の中にでも俺の目の前にでも出てこい」
「うん…」
「それと俺がそっちに行くまで見守ってはもらえないか…」
「うん…なんか昔と言ったこと逆になっちゃったね。」

もうほとんど透けて後ろの景色まで見えるようになってしまった名前が笑う。

「そうだな…」

釣られて真田も笑うが真田の頬には一粒の水滴が伝った。

「名前…俺はお前のことが…」
「私も弦一郎のこと大好きだよ」
「そうか」

そう言って真田は名前のことを正面から抱きしめた。

「もう本当に時間がないみたい」
「最後までこのままでいさせてくれ」
「わかった…」

「弦一郎…”また”ね…」
「あぁ…”また”な」

間もなく名前は真田の腕の中で完全に消えていった。

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夏なんでちょいとお化けネタをw

初めての真田こんなんでいいのかw

20120730 知