どしゃあとバケツをひっくり返したような雨がかれこれ一時間は続いている。正確には激しさを増しながら。といった方がいい。
すぐに止むだろうと踏んで校舎を飛び出したはいいものの全然止む気配はなくとりあえず本屋さんの軒先に逃げ込んで上記のとおり一時間。午前中は青空が広がってたのに。
冬の冷たい雨が染み込んだローファーをじと目で睨んで今日何回目になるだろう溜め息をついた。それは雨音のスクリーンにすぅっと溶けるようにして消えていった。
すっごく寒い。指先なんてもう感覚なくなってきた。手袋でもしてくるんだったなぁ。っていうか家まであと30分の私はどうやって家に帰ればいいのだろうか。誰か教えて欲しい。
先程から勇気ある立海生が痛いほど叩きつける雨の中を走っているのだが私には30分走りきる体力などなさそうだ。
するとありがとうございました。という声と共に自動ドアの開く音がした。後ろを振り返れば校内でもそして全国的にも有名な柳くんが立っていた。手には数冊ビニールに包まれて濡れないようにした本を抱えていた。




「どうした苗字」

「見ての通り」

「大方、天気予報を見忘れ雨は降っているがとりあえず走れば何とかなるだろうと思い走ってみたが色々と限界が来た。…というところか」




どんぴしゃ。どんぴしゃだよ柳くん。
そうなんですと言わんばかりの苦笑いをすれば柳くんも苦笑いを返した。




「柳くんだって本買って。濡れちゃうじゃん」

「だからわざわざビニール袋に包んでもらったんだ。俺は天気予報は見逃さない質でな」




さすが。としか言いようがない。苦笑いを浮かべてまた明日ね。と手を振るが柳くんは鞄から傘を取り出したものの開かない。
どうしたのかなぁ。と思っていたら柳くんはこちらを見下ろしてから入っていくか?と微笑んだ。




「でも柳くん濡れちゃうよ」

「言っただろう。俺は天気予報を見ている」




お前が傘を忘れる可能性は89%だ。と悪戯っぽく笑った柳くんに胸がピクンと跳ねた。
多分これが恋に落ちた音とか言うんだろう。
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