「チョコレートの季節だね」
「そうだな」
「バレンタインだね」
「あぁ」
「英二にあげようかな。」
「あぁ」
「………」
「………」
沈黙。いや、手塚との会話が続くなんて端っから思ってなかったけどさ。
正月が過ぎ去れば世の中は節分なんかよりもバレンタインを大々的に取り上げる。スーパーなんかに行ったって本命は手作り。なんてキャッチコピーが書かれていたりする。いくらチョコレート会社の勝手に決めた好きな人にチョコレートというイベントだとしても私だって女だ。便乗してしまう。
しかし私の想い人はそんなイベントよりも私との会話よりも目の前の難しい本の方がお気に召すらしい。まぁ、彼氏じゃないし。なんにもいえないんだけど。
こうなったら妬きもちなんて到底期待出来そうにないので英二や不二、大石なんかにあげようかと思う。不二あたりならお返しだってバッチリ期待できるし。馬鹿手塚。堅いんだよ。何もかもが。
「…本面白い?」
「あぁ」
「…私と話してるより?」
「それは意外な質問だな。逆にお前は本を読んでいる人間と話していて楽しいか?」
「話しかけるなってこと?」
「そうとは言っていない。俺は本を読みながらの会話は可能だ」
「あそ…」
本を読みながら会話するくらい私に興味がないということでいいのだろうか。いや、それが正解だろう。
手塚はまた黙り込んで本に没頭。私は机に突っ伏した。わざわざあんたの隣の席にまで来て乗っからないと分かっているチョコレートの話題ふっかけた私の見にもなりなさいよ。もう手塚にチョコレートなんかやらんぞ。今年はチョコレートケーキ焼く予定だったのに。あれは一回作ったけどめちゃくちゃ美味しいんだからな。私の唯一の特技なんだからな。
「手塚」
「なんだ」
「甘いの嫌いなの?」
「…好きではない。」
「毎年もらってるチョコどうしてんの?」
「一口は食べる。あとは菊丸達に取られるな」
「…私が去年と一昨年あげたチョコはそうやって消費されたわけね。」
「いや。」
「…え?」
「一応食べたぞ。」
手塚と珍しく会話してるよとか思ったが手塚からそんな言葉が返ってくるなんて予想外だ。手塚の顔を下からのぞき込んでみるが顔には変化はないうえになんだ。と真顔でかえされてしまった。
「食べたの?」
「あぁ」
「私のチョコ?」
「あぁ」
「…おいしかった?」
「もう少し甘くなければ好んで食べる」
「こ、今年はビターにするから!」
「…なら」
楽しみだ。
手塚の口角が少しだけ上がった。うわぁ。これって勘違いしてもいいのかな。自惚れですか?
ねぇ手塚。
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こうなった。
手塚可愛い。
めちゃくちゃおいしいです。
私が。
20120129 榛