次の日も次の日も学校が終わるとすぐに玲奈の病院に向かった。
そして早くも事故から一ヶ月以上もの月日がたっていた。
ある日の昼休み、俺のケータイがなった。
連絡を聞き、一緒にお弁当を食べていた真田に言伝を頼み5・6時間目をさぼりすぐに病院へ向かった。
「玲奈!!!!!」
勢いよくドアを開けると久しぶりに聞く声で返事が返ってきた。
『すみません、どちら様ですか?』
玲奈が目覚めて嬉しいはずなのに奈落の底へさらに穴を掘ってしまったようなどうしようもない感情に陥った。
「誰って…精市だよ?小さい時からずっと一緒だったじゃないか。」
『すみません。全然記憶がなくて…。実は自分の両親のことすらわからなかったんです。』
「そん…な…」
奇跡的に意識を取り戻したのにこんなことってありなのか…。
俺はひざから崩れるようにして落ちた。
静かにほほを伝う涙すらうっとおしくて屋上へ飛び出した。
なんでなんでなんでなんでなんで!!!!!ずっと問い続けた。
1時間ほど経ったのだろうか。冷たい風がすーっと通り身震いがしたので玲奈のところへ戻った。
『あ…』
「ねぇ玲奈、本当に俺のこと覚えていないの?テニス部のとこも覚えていないの?」
玲奈は一瞬困ったような顔をしたが蚊の鳴くような声で『はい』と一言つぶやいた。
「そうか…」