第一章  



冬。

日が短く、ろくに練習のできない季節だ。

「部長〜もうボール見えないっすよ」
「そうだね。よし、今日はもう上がろう。」

俺らはそのまま高等部に上がるため受験がない。よって3年の冬になっても練習に参加しているのだ。

「じゃあみんな気を付けて帰ってね」
「はい」

18時30分。

夏ならまだまだやれるけどこの時期ではもう真っ暗。人もいないため車はスピードを出して走る。よって交通事故も多い。

『精市ー』
「あ、玲奈。お疲れ」
『お疲れー。』

幼馴染の玲奈はマネージャーとしてよく働いてくれる頼りがいのあるやつだ。
家族ぐるみで中がいいため昔からよく遊ぶことが多かった。

「このまままっすぐ帰るの?」
『うん。寒いしね。』

実はひっそりと思いを寄せているだなんて誰も気づいていないんだろうなー。

『精市!!!!危ない!!!』
「え?」

キキーーーーーーッ!!!

すごい音がした。でも全然痛くない。たぶん痛すぎてなにも感じないのかも。ほら、血特有の生暖かい感触がする。

でもすぐにそれが自分のものではないとわかった。

『……』
「玲奈!?大丈夫!?」
『……』

返事がない。俺は青ざめた。

「救急車呼ぶからちょっと待ってて!!!」

本当にあせりたかが「119」を押すことすらやっとの思いだった。

10分して救急車がやってきて俺も同乗した。救急隊員の方に状況を話し、病院に着くや否や玲奈は集中治療室に運ばれた。

玲奈の両親も俺の両親も来てみんな泣いていた。

3時間して玲奈は帰ってきた。でもまだ目を覚まさない。

医者は静かな声で言った。

「もしかしたらもう…二度と意識を取り戻さないかもしれません」

頭の中が真っ白になった。というかまず自分がなにを言われているのかすら理解できなかった。

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