名前を教えて。



今日の極楽満月は定休日だが、珍しく昨晩火遊びをしなかった白澤は朝から薬作りに励んでいた。そんな白澤を手伝うなまえはとあることに気がついた。

「あれ?白澤様、ウサギさん増えてません?」
「あ、ほんとだ。きっとどの子か産んだか、どっかから来たんだろうね。いいよね、ウサギは。年中発情しても誰も怒らないんだから。僕もウサギになりたい。」

そんなことを言う白澤の横にいる桃太郎となまえは収穫した仙桃をすりつぶし、金丹を作る下ごしらえをする。

「桃太郎さん。今夜はすき焼きにしましょうか…。目の前に牛肉転がってますし。なに、こっちの下ごしらえは私がしておきますよ。」
「なまえさん、怖いっすよ…」

仙桃をすりつぶすどころが今にも握りつぶしそうななまえをみながら桃太郎は自分の身を案じた。

「もう、女の子がそんな物騒なこと言わないの。」

いつしか流行ったお笑い芸人のような言い方で話してくるのがすごく腹立つ。

「ふと気になったんですけど、このウサギさんたちって名前あるんですか?」
「あるよ。こっちの子がリンリン、こっちはランラン、こっちがカンカンで…」
「パンダじゃねぇかあああ!!」

横から桃太郎が突っ込みを入れる。

「桃タローくん、ツッコミ上手くなったね。」

感心する白澤の横でなんとなく思った疑問をなまえは白澤にぶつけた。

「ところで、白澤様の名前は?」
「僕?白澤だけど…」
「いえ、そうではなくて…。『白澤』ってそもそも固有名詞じゃないじゃないですか。ウサギとか、サルとかそう言う括りの」
「まぁ…確かに。でも気にしたことないよ。『白澤』は僕しか居ないし。」

当の本人は本当に気にしていない感じだが、名前がないというのはなまえにとってとてもさみしく感じた。

「私たちは生まれて親につけてもらいますけど白澤様はそうじゃないですもんね。」
「まぁね。まず僕には親っていうのもいないし、なんで『白澤』なのかなんて正直僕にもわからないしね。」
「そんなもんなんですか?」
「うん。元々ないとなんとも思わないね。」

改めて考えると余計わけがわからなくなりそうだったのでなまえも白澤は白澤という妖怪の白澤だと思うことにした。しかし少しだけ腑に落ちなかったのかぼそりとつぶやいた。

「でも…」
「ん?」
「あだ名くらいつけてみません?」
「あだ名?」
「はい!もし『白澤』が白澤様以外にいたとしても白澤様は白澤様であるとわかるように!」

なまえはぱあっと明るい顔をして提案した。それにつられて白澤も桃太郎も笑顔になる。同じ神獣が2体もいてたまるもんかという話だが、3人にとってそれは関係なかった。

「じゃあ、なまえちゃんつけてよ」
「私がつけていいんですか?」
「うん。なまえちゃんがつけてくれるならなんでもいいよ」

薬を袋に詰めながらニコニコと笑う白澤はすこし嬉しそうだった。

「じゃあ…」

真剣に考えているなまえを白澤は愛おしそうに見つめる。

再びパッと明るい表情を浮かべ、白澤の元へと駆け寄った。

「白澤様!かがんでください!」

そう言われて白澤がすこし膝を曲げるとなまえは手を筒のようにして白澤の耳へ当てる。

「 」
「素敵な名前をありがとう。」

こいつのあだ名なんて極楽蜻蛉とか、白豚でいいんですと鬼灯に言われるのは別のお話。

ーー

いつしか流行ったお笑い芸人=姫ちゃん
牛肉=白澤様=牛目

個人的に白澤様の名前が気になったので。

あだ名はご想像にお任せします。

20140422 知






[ 3/6 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -