アルバトを体験です。


鬼灯の今回の視察の目的はアルバイトを体験することと亡者の回収だった。鬼灯は前々から少し怪しげに思っていたビルの近くで働くことにしていた。幸い、ここの店は店員全員が帽子をかぶっているので擬態薬も必要としなかった。

「今日からお世話になります。加々知です。短い間ですが、よろしくお願いします。」
「私、名字名前と申します。こちらこそよろしくお願いします。では一通り説明しますね。」
「はい、お願いします。」

鬼灯は名前に仕事を教わり、てきぱきとこなす。

休憩時間。店のバックは二人きりだった。しかし、二人の間に会話はなく妙な空気になっており、どうしていいかわからなくなっていた名前はトイレに行こうと椅子から立とうとした時だった。

「あの、名字さん。」
「えっ?あ、はい。」
「霊感ってありますか?」
「霊感…ですか?」

鬼灯に聞かれキョトンとする名前。

「そうですね…あるって言ったらあります。結構そういう体験多いんですよ。」
「やっぱり…」
「やっぱり?」
「あなた、向かいのビルを度々眺めては眉をひそめていますよね。」
「…はい。」
「もし、詳しいことを知っていたら教えていただけませんか?」
「わかりました。」

名前は順に話し始めた。

名前が言うには、向かいのビルは俗に言うブラック企業といわれるもので、今まで何人かの社員が過労死していた。その数は日に日に増え、最近ではその企業とは全く関係のない悪質な霊が集まってきている。ということだった。

「なるほど…。通りで…。」
「でも、なんでそんなこと…」
「少し興味があっただけです。ありがとうございます。」
「いえ。誰かに言っても信じてもらえないだろうし、話せてよかったです。あ、そろそろ休憩終わりですね。あと2時間、頑張りましょう。」
「はい。」

2人は持ち場に戻った。


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