▼ 写真
息は白く弾み、指先がかじかみ、体の芯まで冷えるような寒さに覆われた江戸では、ほとんどの人が年神様を迎える準備をしていた。無論、真選組も例外ではない。
「トシ、これはいるの?」
「いや、捨てちまって構わねぇ」
「そう。」
土方と名前は土方の部屋を掃除していた。といっても元々片付いていたし、そんなに大変というほどではなかった。
「なにこれ。」
名前が押入れの布団を干そうと布団を引っ張り出した時、一枚の写真がはらりと落ちてきた。
「トシ、この写真…」
「あ?あぁ…懐かしいな。」
「武州にいたときの?」
「そうだ。」
写真には若い頃の土方、近藤、まだ幼い沖田のなかにミツバもいた。
いつ見てもミツバさんは綺麗だな…
ーー名前は素直にそう思った。
「あれ…」
「どうかしたか?」
「なんで、ここにお祖父様が…」
「は?」
改めて写真をよく見ると後ろにはたまたま写り込んだ人の中に名前の祖父と小さな少女ーー名前がいた。
「偶然…だよな」
「えぇ…この着物を着てるってことはたぶん9歳…両親が亡くなってまだそんなに経ってない時だわ。私、その時初めて武州に来たんだもの。」
「………」
「………」
土方と名前は目を合わせるとお互いに笑みをこぼした。
「俺達は知り合う何年も前に一度会っていたってことか。」
「そうね。ふふっ…」
「なんだよ」
「いえ、少し嬉しくて」
「そうか。それ、お前にやるよ。」
「えっ…でもこれは…」
「持っててくれ。」
「……わかった。ありがと。」
名前がそう言うと土方は、何も言わずにーー少穏やかな表情で掃除を再開した。
ーー
掃除終わりません(´;ω;`)
20131230 知