▼ 言葉の裏の裏の裏の裏の裏
「もしもし?」
「あ、俺だけど…」
オレオレ詐欺かと突っ込みたくなるような電話独特の挨拶をする土方とは早くも付き合い始めて1年になる。
「うん。どうしたの?」
「週末、そっちに行く約束だったんだが仕事が入っていけなくなっちまった。すまねぇな、いつもさびしい思いさせちまって」
「いいよ、仕方がないもん。それにさびしくなんかないよ、私は大丈夫だから体に気を付けてね?」
「あぁ。埋め合わせは必ずするから。」
「うん。ありがとう。お仕事頑張ってね。」
「おう。時間があるときにまた連絡する。」
「うん。じゃあまたね」
「あぁ。」
ピッという無機質な音と共に切られた電話を見ると通話時間はわずか30秒。短いなんて思わない。忙しい合間に電話をしてきてくれているのだ。まぁがっつりデートを断られたわけだがな。
「はぁ…またかー…」
そんなことを思いながらバフンをベッドに倒れるとそのまま眠りについてしまった。
――週末
「んー…どうせ暇だし、買い物でも行くか」
そう思い外に出ると週末とだけあって街は人でにぎわっていた。
「やっぱ週末は人多いなー…」
そんなことを思いつつ、大江戸デパートに足を運ぶ途中に見慣れた黒い制服の男がいた。
「あ…」
紛れもなく土方である。しかしその隣には楽しそうに土方と話す女性。あんにゃろぅ…仕事だとか言って浮気してやがったのかだなんて口には出さなが顔には出ていたようで…
「あ…あいつ…おい名前!!おい!!」
目が合ってしまった。やばいと思った名前は走りだし、土方も彼女を追いかける。
「ちょっと!!土方さん!?」
置いてけぼりにされた女性は悔しそうに地面を踏み、一方の土方は名前になかなか追いつけていなかった。
「おい、待てよ名前っ!!!」
「ついてこないでください、ストーカー!!」
「すっ…ストーカーってお前!!誤解されるだろうが!!」
「おまわりさーん!!!助けてくださーい」
「俺がそのおまわりさんだっつーの!!!」
「うわっ!!!」
縁石に躓き、名前はバランスを崩してしまい、土方はそこを見逃さなかった。
「やっと捕まえたぞ、名前。」
右手を力強く握られてしまい、もうなす術のない名前は座り込み、無言でうつむいていた。
「お前、なんで俺のことを見て逃げ出すんだよ。」
「……だって…うっく…土方さんの浮気者ぉぉぉ!!!」
「は??」
訳が分からない、土方はそんな表情をしていた。
「…うっ……仕事でデートドタキャンッ…したのになんでっ…なんであんな女といるのよ!!!もう!!」
「いや、違うって…」
「違わなくないじゃんかぁぁああ!!!あたしなんかよりよっぽど色気だって胸だってあるし!!!土方さんが巨乳好きなのは予想してたけどいくらなんでも浮気する人だなんて思ってなかったもん!!うわぁぁぁあああん!!!!」
「べっ…別に俺は巨乳好きじゃねぇ!!!」
土方の大声に通行人がバッとこっちをみた。
「あーー!!とりあえずここじゃ人目に付くしちょっとこっちに来い!」
土方は名前を立たせると細い路地へと入った。
「んで?俺がどうしたって?」
「だぁーかぁーらぁー!!土方さんが浮気したんでしょ!!!」
そういいながら地面にペタンと座った名前はポカポカと視線を合わせるようにあぐらをかいて座っている土方の胸をグーでたたく。
「毎回毎回、デートが仕事と重なっちゃって断られて、どんだけやきもきしていると思ってんの!!…なんで土方さんのこと好きになっちゃったんだろ…」
「じゃあ別れるか?お前はまだ若いし、俺とだらだら長く付き合って婚期過ぎさせちまっても」
「やだ!!!」
土方の言葉を遮って名前はさけんだ。
「土方さんのこと大好きなの!!もう意味わかんない…。なんであたしのこと惚れさせたんだよ、バカ!!!なのに…なのに…」
「ば…バカって…。それにな、名前。あれは本当に浮気じゃないんだ。お上からあの女とどうしても見合いしろって言われて、でも俺にはもう守りたい奴がいるからって相手の親父さん説得して納得してもらって、でも今日一日でいいから江戸を一緒に回ってくれって言われてな。名前には悪ぃと思ったんだけどよぉ…すまねぇな」
「本当に?」
「あぁ、本当だ。」
「ごめんなさい…」
名前は土方に抱き着き、素直に謝った。
「俺も名前が優しいからって、そこに甘えすぎちまったな。さびしくないって言葉、真に受けちまって、更にそこで頑張ってとか体に気を付けてなんて言って俺のこと心配してくれっからそれだけで安心しちまって…まともに顔を合わせるのだって少ないのにさびしくないわけないよな。ごめんな?」
名前の髪を右手の指で絡ませながら梳き、左手では子供をあやすようにポンポンと背中を叩きながら謝る土方。
「いいよ。全然。その代りしばらくこうさせて?」
「あぁ。」
そのうちすやすやと名前の寝息が聞こえ始めた。そしてどんなに頬をつついても、軽くつまんでも起きないことを確認し、土方はこっそりとささやいた。
「俺が守りたいのはお前だよ、名前。お前には一番幸せになってもらいたいんだ。いつ死ぬかもわかんねェ俺がいうのもあれだけどよぉ、そのうちお前にガキ産んでもらって、お前と一緒に成長を見守って、お前と一緒にじいさんばあさんになっていって…最期はやっぱお前とガキ共に看取ってもらいてぇが、今日の様子からして俺の方が長生きしねぇとダメそうだな。にしても、ほんとにいつもさびしい思いさせちまってわりぃな。もうさびしい思いもさせねぇつもりだし、泣き顔なんざ見たくねぇからいつも笑っていてくれよな。……なんて、俺らしくねぇな。」
ハッと自嘲気味に笑うとそろそろ時間もいいころだし、名前を起こして家まで送ろうと思い名前のことを揺さぶった。
左薬指のサイズをメモをしまって。
ーーー
先にいいます、別にこれは誕生日企画とかじゃないですww
たまたま書き終わったのが今日ってだけなんですww
まぁ、別で土方さんの誕生日小説書きますかね。インスピレーションがわけばww
20130505 知