▼ 未来予想図
「おかえりなさい!!」
「おかえりなしゃい!!!!」
「ああ、ただいま…って、え?」
今日も総悟の代わりに始末書を書き、お妙を追ってどこかへ行ってしまった近藤さんの代わりにどこぞかの星の王子様だか王様だかの相手をし、仕事中にミントンをしている山崎に怒鳴り…とまぁ、一日仕事終えて、同棲している恋人の元へ帰ってみるとそこにはもう一人、1歳か2歳くらいの小さな女の子がいた。
「え?…あ…え?」
いやいやいやいや!!落ちつけ!!落ちつくんだ十四郎!!!そりゃヤることはヤってっけどよぉ…でもいつもヤるときゃちゃんと着けてるよな?失敗してたり酔った勢いで実はそのままヤってましたーとかねぇよな?というかいつこいつ出産したっけ?ていうか成長早くね?あれ?俺タイムスリップしてる?それともあれか?このガキ、名前の前の旦那の子供とかか?ていうかこいつバツイチだっけ?いやいや、こんなに若ぇんだ、んなこたぁないない…
「ちょっとトシ?何してるの?」
壁に手をつき時折首を振ったり呼吸が乱れたりする俺を見て名前は声をかけてくれた。
「あのよぉ…俺…いつ失敗したっけ?」
「は?」
「だから…その…いつお前に種植えつけたっけ?」
「ふふっ…。なにいってんのよ!!!もう!!この子は私の子じゃないよ。あー…おっかしー」
名前は吹き出した。
「そ…そうか…。」
俺は安心した。
「この子は私の親戚の子だよ。まさかトシが帰ってこれるとは思わなかったから、今日明日あずかることになってたんだ。ほら、このお兄さんにも挨拶しよ?こんばんはって」
そういって名前が声をかけるとひょこっと顔をだす。
「ばんわー!!」
「お…おぉ…」
「コラ、トシ。ちゃんとあいさつしなきゃ!それと子供と視線を合わせる!」
「こ…こんばんは…」
「ほら、名前も言わなきゃ。ね?」
「ほにょかでしゅ!!!」
「ほのかか…。十四郎だ。よろしくな?」
「しくー!!!!」
元気よく自己紹介をするほのかとは反対に緊張した様子で声をかける俺の姿は名前にどう映っているのだろう。
「おい、名前。晩飯はもう食ったのか?」
「子供の前で汚い言葉を使わない!!…って…それどころじゃないよー。一人で遊ばせるのもあれだし一緒に遊んでたからまだなんだ。今日、カレーだからすぐできるしちょっとまってて」
「おぅ。」
そういって俺はリビングへと向かい、新聞を広げる。
「おねーちゃーん。ごはんなにー?」
「ほのかの好きなカレーだよ」
「カリェー?やった!!!」
「すぐできるからちょっとまっててねー」
「うん!」
満面の笑みで頷き、そのまま名前の足にしがみつく姿はなんとも愛らしい。そんな姿を俺は新聞を読みながらずっと見ていた。
「いただきます」
「いただきましゅ!!!」
「いただきます…」
「ほのか、ほら、あーんして」
スプーンを手に取りほのかに食べさせる姿はもはや母親同然だ。名前に食べさせてもらってうれしそうににこにこ笑うほのかの姿からしても傍から見たら二人は親子の様だ。
「ほのか、おいしかった?」
「うん!!」
親子のような二人を見ていると自然と頬が緩むのが自分でわかる。ふと名前の皿を見てみるとほとんど減っていなかった。
「名前。皿とか俺が片づけておくからその間にお前はそれ食っ…食べてろ」
危ない危ない…また名前に怒られるところだった。
「ありがとう。でもそれじゃあほのかが一人になっちゃうからほのかとお風呂入ってきてくれない?」
「あー…わかった。」
「ありがとう。お願いね」
「ほのか!お風呂行こうか」
「いく―!!」
といったもののどうすりゃいいんだ!?普通に風呂に入れればいいんだよな?溺れないように注意すればいいんだよな、あぁそうだ。
服を脱がせて二人で浴室に入ると少しひんやりとした空気が俺らの周りを流れていた。
熱くない温度にシャワーを調節してやりゆっくりとほのかにかけてやる。タオルでよく石鹸を泡立ててやりそっと体を洗ってやり、またゆっくりと湯をかけてやる。自分も素早く体を洗い、ほのかを抱きかかえた。
「よし、お湯に入るからしっかり捕まってろよ?離したら溺れるからな」
「うん!!」
熱すぎないことを確認し、ゆっくりと湯船につかる。自分が肩までつかったところでほのかを腹の上に乗せ、膝で背もたれを作ってやるとほのかはまた笑った。
「気持ちいいか?」
「うん!気持ちー!!!」
「トシー!ほのかー!湯加減平気?」
ちょうどいいタイミングで名前が声を掛けに来た。
「あぁ」
「へーき!!」
「よかった。ふたりとも着替えここに置いておくね」
「ありがとうな」
「あっとー!!」
「はーい、どういたしましてー。じゃあごゆっくりー」
それからふたりで水の掛け合いやタオルで風船作ったりといろいろ遊んだ。
「どうする、ほのか?そろそろあがるか」
「うん」
「じゃあ10数えたら出るぞ。いーち」
「にー」
「さーん」
数字を数えながら総悟がまだ小さかった頃を思い出す。懐かしいな。そして
「じゅー!!!」
「よしっ、上がるぞ」
体が冷えないようにほのかを先に拭いてやり寝巻を着せる。自分も着流しに着替えリビングに向かう。
「上がったぞ」
「おかえり。もう遅いしほのかはもう寝ようか?」
「やっ!!!」
俺が帰ってきてから初めての抵抗だ。
「えー?でも寝ないと明日起きられないよ?」
「ひとりやっ!!しゃんにん!!」
「三人で寝るの?」
「うん!!」
名前と顔を見合わせ三人で寝室に向かい、ほのかを真ん中にして寝っころがる。俺も名前も内側を向き、ほのかを撫でながら寝かしつける。すると10分もしない間に寝息が聞こえてきた。
「寝ちゃったね」
「寝たな」
「トシ絶対ちっちゃい子ダメだと思ってた」
「あぁ、ガキは嫌いだった」
「だった?」
「なんかほのかのこと見てたら、かわいいなって思ってな…」
「意外だなぁ」
「俺だって自分でビックリだよ」
「そっか」
「俺…名前とならこういうのもいいなって思った。ていうか、俺らに子供がいたらこんな感じなのかなって…」
「トシ…」
「俺はいつ死ぬかもわかんねェ身だし、所帯持つ資格なんかねェと思ってる。でも…な?」
「私はトシとならこんな生活大歓迎だよ?」
「真剣に一回、話し合うか」
「そうだね」
「お前、取り敢えず風呂入ってこいよ。一日ほのかと遊んで疲れただろ?」
「うん。そうする」
「お前上がってくるまで待っててやっから」
「ん。ありがとう」
「おぅ」
そういって名前は風呂へ向かった。
本当に過去に見切りつけて、真剣に将来考えなきゃな…。やっぱ住むのは屯所か…?あいつ嫌がるかな…。まぁ…そんな急ぐことでもないし、ゆっくり二人で考えよう。
二人で…。
―――
20130102 知
新年一発目がこれですw
今日会った親戚の子供がめっちゃかわいいんですよ!!!私になついてくれてもうっ…!!ほんとにこういう喋り方するんですね、ちびっこってw
土方さんは子供に振り回されてください。えぇw