銀魂 短編 | ナノ

 面影を焼き尽くす
 
私は彼女じゃないのに。

ぐじゅぐじゅと膿みきった傷口を抉られるような、痛みを伴いながら貪られるような感覚に陥る。彼の言葉はまるで蛆のようにぎちぎちと嫌な音を立てて身を、心を食い尽くしていくようだ。引きちぎっていくようだ。彼にとっては私の中に彼女の面影を探すことで生きる糧にしているのかもしれない。でも私は餌だから。だからどんどんなくなっていく。そして私の心を目も当てられない程醜い物へと変貌させる。食い尽くされた先の私には何が残るの。きっとこんな私でも仮に愛してくれた彼ですら見放してしまうほどの、誰からも必要とされない私。でも私をそんな風にさせたのは貴方なのよ、副長。

「名前、?」
「副長。お墓参りですか。沖田くんもそんなにいかないのに、熱心ですね」
「何が言いてぇんだ」
「私が死んだらお墓参り、してくれますか」

その一言を聞くと副長は、目の色を変えて私に突っ込んできた。殴るわけではないけれど、私の胸ぐらを掴み上げて鬼のような形相で私を見ている。いつも開いているように感じる瞳孔の面積が広い黒眼には、真っ黒な目をした私が映り込んでいた。彼の前では死という単語は禁句である。昔から家族のように一緒にいた真選組の仲間たちを何人も失って、そして大好きだったのに好きだと伝えることも適わなかった女性と死別しているのだ。
こんな男と結婚しても、付き合ってもあいつは幸せになんてなれない。それが彼の言い訳だった。それでも私と付き合ったのは何故。私は傷つけたって構わない小さな存在に過ぎないからだろう。じゃあどうして私に愛してるだなんて思ってもない言葉を吐くのだろう。その答えは簡単だ。私と彼が出会った頃の雰囲気は失った彼女を彷彿させたらしい。目元がそっくりだから血縁者かと思ったとも言った。私に優しかったのは私に優しくしたかったんじゃなくて、私の中にある彼女の雰囲気に優しくしていれば彼女への償いになると思っている。不器用な彼には私を傷つけることしか出来ないのよ。

「お前、」
「だってそうでしょ。あなたは死んだ人にしか執着してくれない」
「違う」
「もし貴方の手で私が殺されたら、あなたは一生私を忘れられないでしょ」

黙れと言う声は掠れていた。どろどろと零れ出す私の汚い口を塞ぐように彼は自らの唇を押しつけた。唇に噛みついてから無理やり私の口を押し合ってぬるりと煙草臭い舌が蠢き始めた。そのキスは快楽を与えると言うよりは、私の口を塞ぎ酸素を奪い取るだけに過ぎない。息が出来ない。苦しいと声を上げれば、つつつとどちらかの唾液が糸のように引いて呆気なく切れた。

「愛してるのに」
「俺もそうだ。だから隣にいる」
「嘘よ、うそ」

ぐちゅぐちゅぐちゅ。
私の傷口が何倍にもなって広がっていく。彼の気持ちが分からない。

(好きが届かない)

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お二人は相思相愛ですよ。

1121 はる
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