▼ 酒は飲んでも飲まれるな
『どうしたんだろ…』
今日は珍しく副長が早く帰ってきたと思ったら一人でずっと中庭に向かって廊下で飲んでる。
「畜生…なんで…」
さっきから誰かに話しかけてるわけでもなくずっとなにかを後悔しているようだった。
まぁなにかあったのだろうと思い自分は少し仕事をしてからもう一度廊下に出ると副長が寝ていた。
『ちょっと副長…。こんなところで寝ていたら風邪ひきますよ?部屋戻りましょう。さっ、立ってください。』
「んぁ…?あんまひっぱんなよミツバ」
『は?』
ミツバって誰…?少なからず私の知り合いにミツバなんて人はいない。まさか浮気…?いやいやまさか…副長に限ってそれはね?
「ミツバ…悪いな…。一人にさせちまって」
前言撤回。腕が抜けるとか知らずに副長の腕を力いっぱい引っ張って部屋まで引きずり布団に投げた。
『このうそつきマヨラー!!!』
目に涙をいっぱいに溜めて障子を閉め、厠に駆け込んだ。
『副長のバカ…』
袖で涙を拭っていたためもうそではびしょびしょだった。でもまだ涙はとどまることをしらない。
―次の日
「あ、名前。来週末休みがとれそうなんだが…」
『……』
「名前?どっか具合でも悪いのか?」
『よくもそんなふつうに接することができますね!!休みが取れるならあの人のとこにでもどこにでも行けばいいじゃないですか!!!バカ副長!!!』
「は…?」
泣きながらまた走った。曲がり角をまがったところで誰かにぶつかった。
『あ…ごめんなさい。大丈夫ですk…』
「っ…。あれ?名前じゃねぇか?泣いてるみてぇですけどどうかしたんですかぃ?」
『沖田隊長…』
「どーせ野郎のことでしょう?言ってみなせぇ」
『実は…』
とりあえずなにがあったかを話した。
「…ったくあの野郎…。ミツバってのは俺の姉上でさぁ。まだ俺らが武州にいた頃、野郎と姉上は恋仲だったんでさぁ」
『だった…?別れたんですか?』
「別れたっていうか…野郎がいつ死ぬかわかんねぇ仕事に就いているから所帯はもてねぇって姉上を突き放したんでぃ。好きだからこそってやつですかねぃ?たぶん…っていうか確実に土方の野郎は姉上のことまだ引きずってまさぁ。」
『じゃあ…私は二番目なんだ…』
「いや、姉上はもう亡くなったんでぃ。」
『え…?』
「昨日は姉上の命日なんでさぁ。きっと昨日はやけ酒だったんだろ」
『…沖田さん…私、副長に謝ってきます…。ありがとうございました…。』
「おぉ」
副長の部屋まで走った。相手の事情を知らずに勝手に怒って…ごめんなさい、土方さん。
『副長!!!!』
「うぉっ!!!」
「じゃ…じゃあ俺はこれで…」
山崎さんが小さくなりながら副長の部屋から出て行った。
『副長…その…ごめんなさい!!朝…勝手に怒って…』
「あ…いや…その…山崎から聞いた。俺も悪かった…。」
『いえ…。あの…副長はまだミツバさんのこと思っているんですか?』
「……」
『正直に答えてください。怒りませんから』
「悪ぃ、まだ引きずってる」
『では、私のことは好きですか?』
「あぁ。好きだ。お前は…そんなの嫌か?」
『いえ。別に、副長がミツバさんのことを引きずっていてもいいです。二つの世界のうちで二番でもこの世で一番ならそれでいいんです。』
「悪ぃな…いろいろ気ぃ使わせちまって…」
『いえ。でも本当に浮気したらその時は本当に怒りますからね』
「まぁ、そんなことにはならねぇと思うがな」
『だといいですね』
「名前は俺のこと好きか?」
『…大好きです。』
「そうか…」
副長はなんとなく満足げに笑って私を抱き寄せた。
――
副長迷子\(^O^)/
20120131 知