▼ 断水?男酔?
「は?断水?」
屯所の郵便受けに入っていた広報誌をみた土方がぽつりとつぶやく。時間は午後5時から8時。夕飯時だ。
「近藤さん。どうするよこれ。」
「まぁ仕方がないよな。ポリタンクに水ためておくか」
「そうだな」
二人がそう話していると横を女中の名前が通った。
「おい名前」
『はい。』
「買い出しの時にミネラルウォーターを何箱か買ってきてくれ」
『わかりました』
午後2時。
快諾した名前は財布を持って江戸の町に出た。スーパーに入って夕飯の材料を買って飲料コーナーに入り目に入ったのはガランとした売り場。
みな断水に備えて買いだめしてしまったのだ。
あきらめて少し離れた店で買おうと店を出ると見慣れたパトカーがあった。運転席には山崎、助手席には土方が乗っている。名前に土方が気付く。
「ん?名前じゃねぇか」
『あ、土方さん』
「どうかしたか?」
『それが水売り切れちゃって…だからちょっと隣町のお店まで行こうかと』
「みんな買いだめちゃったんだー。というか名前ちゃん、仮に水を買ってもどうやって屯所まで持ち帰るつもりだったの?」
『あ…』
山崎にいわれそういえばとはっとする。
「ったく…ほんと抜けてんな」
『す…すみません』
「ほら、隣町の店まで行くぞ。」
『えっ?そんな、悪いですよ』
「いいんだよ。ちょっと足を延ばしたパトロールだ」
『ありがとうございます』
「それと山崎、降りろ」
「えっ!?なんでですか副長!!!」
「うっせぇ、副長命令だ。さっさと降りろ」
「わかりましたよ。」
バタン。
ブツブツと文句を言いながら山崎がパトカーから降りる。
『山崎さん…かわいそう…』
「あ?いいんだよ」
『そうですか…』
「ほら、いくぞ」
『はい』
土方はわざと遠回りをしていることに名前は最後まで気づかないのだ。
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20120519 知