銀魂 短編 | ナノ

 頭に響く赤

俺の彼女は最悪だ。

天誅と叫んだ土方の声に一気に真選組が反応し遊廓に黒尽くめの男たちが血気盛んに刀を振りかざし入っていった。俺は1人溜め息を吐き出すと男たちとは逆の方向にゆっくりと歩みを進めた。薄暗い遊廓の一番奥まったやたらと大きく煌びやかな襖を開けた。瞬間、ビシャッと嫌な水音をたてて俺の顔に二酸化炭素を存分に含んだ赤黒い血が飛び散った。部屋の真ん中には小太刀を浪士の首もとに突き立てる花魁が1人。艶めかしい髪の毛を乱して妖しげな表情を浮かべながらにっこりと笑みを浮かべた。真っ青な着物にやたら血飛沫は映えていた。背筋が凍り付きそうなくらいその姿に見入ってしまった。

いつも身にまとっている黒い隊服よりもそちらが似合っていると思うのは、彼女がただ女だというだけではないだろう。彼氏彼女としての贔屓目もあるかもしれない。しかしそれ以上に花魁姿の名前は美しかった。首元に丁寧に巻き付けてあったスカーフを取り外し血色の悪い彼女の真っ赤に染まった手を拭えば名前は目だけ細めて笑ったように俺をその眼中に写した。


「何かされたか」
「別に。いつもどおり」
「酒のんで遊んだだけですかィ」
「そう。そんで寝る前に殺すの」


効率的でしょ。真っ赤に染まった小さな唇を親指で荒々しく拭った。何もかもが気にくわない。例えそれが潜入捜査でかなりの実績を残していても名前のことを気に入った阿呆な攘夷浪士達が機密をいとも簡単に漏らすと言うことも分かっている。頭では良く理解してそれを承諾して推奨しバックアップしているのだが、彼女が好きだというヘドロのようにどろどろと汚らしく溢れかえる感情が抑えきれないのだ。
名前と口から漏らせば乾ききった唇がピリッと裂けてじりじりと痛みが走った。
彼女との間には何故か見えないはずの檻があるようにすら感じた。


「真選組やめねェか」
「辞めない」
「簡潔に理由を述べなせェ」
「なんで?私ここにいるの、楽しいもん」


総悟くんが辞めちゃえば?名前の唇がにっと横に歪むように広がった。この女、最低だ。
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