「お父さん。」

私がそう言うとお父さんは私を吸い寄せる様に抱き寄せた。華奢に見えて意外とがっしりしている胸板に顔をうずめるとお父さんの匂いが私を包み込む。

「お前もいい加減親離れしろよ。」

未だにお父さんと一緒に寝ている私に対しての嫌みなのだろう。でもお父さんの顔は嫌みを言っている顔に見えない、嬉しそうな顔。あんなこと言ってるくせに本当は離れて欲しくないくせに、可愛いすぎるお父さんに胸が高鳴った。


「私って全然お父さんに似てない。」

お父さんを見つめてると、どれだけ自分の顔とお父さんの顔が似てないか分かる。本当にお父さんの子?って聞きたくなるほど。
お父さんは時間が止まった様に年を感じさせない。ずっと美しいままのお父さんはずるい。
その髪も、その瞳も、その口元も、その鼻も。その端正な顔立ちに嫉妬すら抱く。

「お前は綺麗だよ、俺よりもな。」
「どうして?」

小さくお父さんの笑い声が聞こえた。笑い方さえも綺麗なお父さん。

「お前は俺が唯一愛した女の子供だ。顔も髪もお前の母さんに似てるお前は俺より綺麗に決まってる。」

優しい手つきで私の頭を撫でるお父さんは割れ物を扱うようだった。


あぁ、お母さんが羨ましい。お父さんにこんなにも愛されて。お父さんは私を愛してくれてるだろうけど、やっぱりお母さんにはかなわない。

お母さんから貰っていたチョコを愛おしそうに見つめるお父さんは、いつもより倍綺麗に見えた。


埋まらない1mmの隙間


20110214
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