「俺はアイツが一番不細工だと思う。」

今日は大人しくしとこうと思って学校についた時から本を読んでいた。学級文庫で私の好きな作家の小説が新しく教室に置かれてたからドキドキしながらページをめくっていた。朝から良い事ばっかりだった。目覚ましがなる前に目が覚めたし、朝食は私の大好きなものばっかり並んでいた。寝癖もいつもより軽めで簡単にセットし終えた、化粧も綺麗に出来たと思うし。しかも今年初めて家を出る時間が余ったのだ。家族には凄いねって褒められて嬉しかった。

いつもより余裕が持てた、何事にも。
男子達が騒いでいた、聞きたくなくても耳に入ってしまう。クラスで誰が一番可愛いとか誰が一番不細工とかそういうのを選んでいた。自分で言うのもなんだけど私は自分の顔を中の上だと思う。(化粧をしたときは、スッピンは中の下)一番不細工でもないし一番可愛いでもない、普通の顔なのだ。

小説も読み終えて今何時か確かめようと時計を見ると時計の近くに立っていた仁王くんとバッチシ目が合った。なんで私を指さしてるの?私が仁王くんと目が合うと仁王くんの周りにいる男子達が仁王くんにブーイングをしたりけらけら笑ってたりした。

「俺あーゆう奴は好かん。アイツの方が可愛い。」

アイツ、と言って仁王くんが指さした方はあんまりパッとしない地味な子だった。私、あの子に負けたの?悔しい、だって今日いつもより可愛く化粧出来たし、髪も丁寧に巻いた。どこがあの子に劣ってるの?あの子はもろスッピンだし、髪もぼさぼさ。ちょっと可愛いって言われて顔赤くしてんじゃねーよ、ブス。自分の性格の悪さがにじみ出た気がした。



「久しぶり、仁王くん。私の事覚えてる?」

数年たった、あれから。仁王くんに不細工と言われてからずっとあの言葉が胸に重くのしかかっていた。私は高校の時にバイトして貯めたお金を整形に全て費やし、偽装二重はくっきり二重にしたし、鼻も高くした。胸も大きくした。皆口をそろえて可愛い、綺麗と褒めてくれる。後は仁王くんが私を可愛いと言うだけだった。そんな私に神様はチャンスを下さったのか私の仕事場に仁王くんが転勤してきたのだ。元から顔が良い仁王くんは大人になったらもっとカッコよくなったと思う。あぁずるい。私が大金を使って綺麗になったのに、仁王くんはずっと綺麗だ。

「…?」
「忘れちゃってる?中3の時同じクラスだった…、仁王くんに不細工って言われた子。」
「…あぁ。」

仁王くんは思い出したように頷いた。私だけが仁王くんの事を覚えてるだなんて少しむかついた。ねちっこい奴だと思われてるんだろうか。あぁ早く私を可愛いと褒め称えなさい。

「お前さんもっと不細工になったのぅ。」

嘲笑うように仁王くんは鼻で笑った。私の中で何かが崩れる音がした。


輝けない一番星


仁王くんが結婚したと人伝で聞いた。あの仁王くんが可愛いと言った地味な子だった。結婚式の写真を見ると二人とも幸せそうに笑ってた。あの子がこんなに可愛いと思ったのは初めてだった。
知ってた、全部知ってた。整形したって私が綺麗になることはないって。涙が溢れてくるのを堪えるのに精いっぱいだった。


20110109
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