謙也さんの彼女がビッチなのは知ってたし腹黒やのも知ってた。でも謙也さんはそれを信じへんくて何度浮気をされても彼女が自分の所に戻ってくるんを待っていた。別に俺は可哀想とかこれっぽっちも思ってないし逆にアホやと思う。さっさと別れろや、見てるこっちが鬱陶しい。そんな事も思ってた。部活中でも彼女が喉乾いたと言えば彼女の好きなやたら高いジュース買いに行くし。練習もままならへん。ダブルスペアの俺が可哀想。
「ねぇ財前くん。」
「なんすか。」
甘ったるい声を出して俺の隣におる謙也さんの彼女。絶対来なさそうな図書室に何で来るんや。背の高さで必然的に上目遣いになる謙也さんの彼女。ドキリ心臓を掴まれた気がした。こんな清純そうなとこ見たら謙也さんもコイツのこと信じたいっていう気持ちも分かる。コイツは清純ぶってるの方が正しいと思うけど。
「謙也って何でアタシに手出してこうへんの?」
「さぁ。俺知りません。アンタのこと大切にしてはるんじゃないんですか。」
「アタシもさー。最初は良かったんやけどもう三ヵ月やで?謙也超面倒やし。重いし。」
あーあ、謙也さんめっちゃ言われてるやん。確かに謙也さんみたいなタイプは面倒くさそうやしな。
「それでさ、財前くん。」
発色の良いピンクの唇が弧を描いた。ドキリなんや又心臓掴まれた気がしたわ。
「私と付き合ってよ。」
何で図書室に来た意味が分かった。アホやな謙也さん。後輩しかもペアの俺に彼女が浮気持ちかけてますけど。でも俺は謙也さんみたいに優しくないから答えはもう決まってる。
恋が死んだ日ニッコリと効果音がつきそうな笑顔を俺はして貪るようなキスをした。意外に浮気って呆気ないもんやな。
企画
浮気さま提出作品